出発点は「扇風機を良くするとはどういうことか」の検討だった。人が扇風機を使うのは、涼しさが欲しいからだ。ここに革新のポイントがあると寺尾氏は考えた。従来の発想では、扇風機とは風を出す機械だが、良い扇風機とは涼しさを提供する機械だと。では、涼しい風とは。それは自然のそよ風である。扇風機は渦を巻いた風を送り出すが、自然の風は空気が大きな面で移動したものだ。では、それを扇風機で再現しよう。

Rain(左)●中にタンクがない新しい構造の加湿器。インテリアにもなるデザイン。44571円(税別)
Smart Heater(右)●従来のオイルヒーターの5倍速く立ち上がり、節電にも優れるヒーター。71238円(税別)

そして考え出されたのが2重構造の羽根だった。外側から速い風、内側から遅い風を送り出す。速度差のある2種類の風をぶつけて渦を消し、面で移動する空気を生み出して自然の風を再現したのである。開発に着手して1カ月しか経っていなかった。

「これヤバいよ、倒産なんかしてられない」。資金調達に奔走し、どうにか発売にこぎつけたGreenFanは冒頭のテレビ効果もあって、初年度に12000台を売り上げた。倒産の瀬戸際からの大逆転である。

ここから同社の躍進が始まり、現在は空気清浄機や加湿器、ヒーターを新たに発売している。いずれも従来の製品概念にとらわれず、ユーザーに与えるベネフィットを考え抜いた先進性の高い製品である。

【バルミューダ創業者●寺尾玄の軌跡】

1990年
 高校を中退し、ヨーロッパを中心に放浪。帰国後ミュージシャンとなる
2001年 バンドの解散を機にミュージシャンの道を断念。モノづくりを志す
2003年 バルミューダ設立。パソコンの周辺機器からスタート
2004~2007年 扇風機開発の発想はあれど、量産製品開発には資金不足で着手せず

↓Turning Point↓
2008年 リーマンショックで倒産を覚悟する。「どうせ倒れるなら前に倒れよう」と、扇風機の開発に集中。1カ月で2重構造の羽根を生み出す


2009年 量産化のための資金調達に奔走し、エンジェルから融資を受けることに成功
2010年 「Green Fan」発売。当初目標の倍にあたる12000台を初年度で売り上げる
現在 「Green Fan」シリーズを始め、次々とヒットを飛ばす。韓国、欧州、中国にも進出
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(澁谷高晴=撮影)