――希望通り、英語を扱うプロジェクトのリーダーになれたのですが、毎日が苦痛です

「自分から望んで英語を扱う部署に行ったけれども、予想よりもしんどかった」と、こういうことですかね。

――ええ。出口さんは英語で苦労されたことはありますか?

僕も英語がダメで、海外赴任時代はものすごいストレスでした。でもそれを解消するには、基本的には勉強して場数を踏むしか解決する方法がなかったですね。勉強してもすぐに英語力は上がらないのに、仕事はしなくちゃいけない、その難しさもわかります。それならば、たとえば電話会議のときは相手に了解をもらって、しばらくの間、英語ができる部下に同席してもらえばいいのでは?

そうやって時間を買っている間に、自分で必死に勉強すればいいのです。

――英語に加えてリーダーというのも予想以上に辛くて……

プロジェクトの責任者という立場は、英語ができる、できないにかかわらず、ストレスがあって当たり前です。リーダーは、ストレス耐性が強くなければ務まりません。総理大臣を見ていてもわかるでしょう。

だから、ストレスを解消する方法をきちんと自分で見つけておくことも大事です。不祥事で追い詰められた経験もある、ある会社の大経営者は、「ストレス解消のために宇宙の本を読む」とおっしゃっていました。138億年の物語を読んでいると、自分が直面している問題など大したことはないと、気持ちを切り替えられたと。

――自分が望んだことだから、頑張らなくちゃダメですよね

そんなことありませんよ。どんな仕事でも、向き・不向きがあるので、今の仕事に合わないことが、その人の価値を決めるものではありません。できないことは「できない」とはっきり言うべきです。

プロ野球の世界でもありますよね。自分は野球が好きで入団したけれど、正選手にはなれなかった。でも野球は好きだし、チームを強くしたいから、スカウトに転身して頑張ろう。これも素晴らしい人生です。選手とスカウトではどちらが偉いかということではないと思います。

どうするかはあなたの自由です。チャレンジしたい気持ちが強いなら、ここは「人生の踏ん張りどころ」と歯を食いしばり、自分の英語力を上げる努力をするしかないし、やっぱり苦痛のほうが大きいから、英語を使わない部署で働くほうが自分の人生にとっていいと思うなら、配置換えをお願いする。

正選手を目指すのか、スカウトに転身するのか、まさにあなたは今、人生の岐路に立っているんだと思います。

問題から逃げずに、自分自身ととことん向き合って、自問自答を繰り返すこと。甘えたらあかんということです。そうすれば、ピンチは必ずチャンスに変わります。

Answer:できないことは「できない」とはっきり言うべきです

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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