資格を採用条件とする国内企業も出てくる

長期雇用を前提とする日本企業では、採用において人事部の力は強い、と言えます。4月一括採用の新卒では、人事部の決定権は絶大です。これに対し、例えばアメリカ企業の場合なら、採用の決定権は部門長が持っています。

営業部門なら営業本部長、管理部門なら管理本部長、あるいは技術本部長だったり、海外本部長だったり、部門のトップが人の採用を決めます。人事は、応募広告を出すなど事務方の仕事をします(ただし、人事システムや評価システムそのものを設計したり、報酬に直結する職務の大きさ(ジョブサイズ)を変えたりと、大きな仕事もします)。

アメリカ企業ではポジションにお金(基本給)がついています。「経理部門の部長なら基本給は20万ドル」「東京支店長なら同じく30万ドル」という形です。基本給のほかに、成果給(株で支払われることも)が付加されます。それぞれの職務で報酬が決まる、いわゆる職務給なのは一般的です。このため、米国公認会計士などの資格保持が応募要件に入っているケースはあります。会社が求める資格がなければ応募ができません。資格を保持していることが基本報酬に予め組み込まれてもいます。

日本企業は大卒の事務系なら、総合職として採用して営業や生産管理など多くの職種を経験させていきます。アメリカ企業は職務専門家として就職します。営業、人事など、同じ職種なら、会社を変わることもよくあります。

「成果が出なければ基本はクビですが、アメリカには労働市場があるのでクビの方がハッピー。働かないエグゼクティブはいません。クビになっても、上位のポジションを経験したことはキャリアになる。ポジションに就くためには、特定の資格が求められることもある。私の場合、以前いた会社で子会社の監査をしていたが、米国会計士資格(USCPA)が採用の条件だった」(アメリカ企業の元人事担当役員)

日本企業でも、職務給制度に近い制度に移行しようとする動きもあり、特定の資格を採用条件とする会社も増えていくかもしれません。

※なお、54社のうち、「非開示」、「非公開」、無回答が各1社で合計3社。また、「職種・業務内容により異なる」と回答した会社が1社ありました。一方、2つ回答した会社が2社、3つ回答した会社が1社でした。

第5回の結論>
・採用において有資格者が有利になるのは、2割弱。
・むしろ、資格に挑戦した人柄、人物が採用では評価される傾向が強い。
・職務給への移行が進むと、資格が評価されるかもしれない。

【アンケートにご協力・ご回答いただいた企業(順不同)】丸紅/帝人/大和ハウス工業/三菱東京UFJ銀行/ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社/ミツバ/三井住友海上火災/キリン/パナソニック/オリックス/双日/富士ゼロックス/三菱重工業/サイバーエージェント/積水ハウス/トヨタ自動車/ブリヂストン/NEC/カルビー/ぐるなび/アサヒグループホールディングス/ユニ・チャーム/ローソン/住友電気工業/新栄不動産ビジネス/三井住友銀行/川崎重工業/キヤノン電子/ニトリホールディングス/クレディセゾン/クラシエホールディングス/ダイキン工業/デンソー/マツダ/サントリーホールディングス/ヤマトホールディングス/京セラ/京王プラザホテル/みずほフィナンシャルグループ/このほか、食品、生保、精密、鉄道、ホテルチェーン、化学、電機、不動産、機械など15社。合計54社。

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