220万3000円をむしり取られたワケ

実はこれ、昨夏、虚偽の求人募集を掲載して、応募してきた人たちに悪質な勧誘で高額な契約をさせていた業者の手口だ(業者は業務停止処分)。

こうした内職・副業商法は以前からあったが、昨今はより巧妙化している。昔は、ほとんど金にならない仕事を与えて、登録料金や手数料の名目で金をかすめ取ったり、「仕事前には研修が必要だ」といって、高額なDVDなどを売りつけたりする手口が多かった。今は、ネットがらみの内職・副業商法が横行しているのだ。

冒頭のケースでも消費者庁が調査したところ、サイトを開設しても収入はほとんど得ることができず、サーバー拡張の事実もなく、業者が全額返金に応じたケースもなかったという。

なぜ、騙されたのか。

最初は登録料3000円、次はサイト開設費用30万円、3回目はサーバー拡張費200万円と、まんまとむしり取られたのは、実は業者が相手の求めに応じたものを、ベストなタイミングで与えていたからにほかならない。その上でワルの業者は自らの意図する方向へと導いている。

消費者はお金がほしいと思って、求人に応募する。その気持ちに付けこみ、業者は少額の報酬を払うことで、信頼を獲得する。その土台の上で「もっと高収入の仕事がある」と持ち掛け、「稼げなかったら全額返金する」などの文句で、高額な契約をさせる。そして、HPが完成した後に若干の報酬を払い、次にまた新たな契約をさせる。小さな損をして、大きな得を取る手法を繰り返し、消費者を手玉に取っている。

もちろん、騙そうとする目的をもっての勧誘行為は絶対にしてはいけないが、この「損して得とる」方法は、一般のビジネスでも行われている。

例えば、新規出店の飲食店がPRのため無料クーポンや割引券などを配り、客を呼び込むのもそれに当たるだろう。店は割引して、客が望むように「おいしいものを安く」提供する。店はその1品だけでは損をするが、客は割引を受けたことで財布の紐が緩んでつい多めに注文したり、以後、常連客となったりする。

その結果、店は儲かるのだ。前出の被害者が徐々に額の大きい副業収入を得ようと思ったタイミングで、業者は若干の報酬や、「全額返金」「費用半分負担」といったエサで罠を仕掛ける。そのような消費者のニーズに合致した的確なタイミングが大事になる。

これを考えず、のべつまくなしに無料情報誌などでクーポン券を載せたり、路上で割引券を配ったりして客を呼び込んでいるだけの店は遠からず、閉店の憂き目にあう。

「損して得とれ」を成功させるには、事前の戦略立案がとても重要だ。