「家の前には公道が通っているのが当たり前」と思ってはいけない。私道に面して立っている家は意外と多いのだ。
都内だと世田谷のように、家が立ち並んだ袋小路をよく見かける。そうした住宅地はかつての農地で、あぜ道などが袋小路として残ったケースが少なくない。そして、そういう袋小路はたいてい私道なのだ。公道に通り抜けられる路地の場合、国に土地を返す「上地」によって、公道となっているケースもある。しかし、一部の住民しか使わない袋小路は公共性が低く、行政コストを上げたくない自治体は上地を避けたがる。
東京23区内の戸建てのうち、半分くらいは私道に面しているだろう。大都市圏で宅地を探すのであれば、私道に面した物件も候補に入れないと、選択肢が狭まってしまう。ただし、私道に面した宅地は住み続けるうえで、さまざまな問題が生じやすいことを知っておきたい。
私道に面した宅地は、宅地の所有者に私道の所有権が一部しかない、あるいは全くない物件が圧倒的に多い。私道の所有権が全くない場合、他人の地所を通らなければ、公道には出られないわけだ。
他人の地所によって周りを囲まれている地所のことを「袋地」と呼ぶ。袋地から公道へ出るため、他人の地所を通り抜ける「通行権」は、民法210~213条で認められている。ただし、私道の所有権がないことは、水道管やガス管といった生活インフラを引く際に大きなネックになる。
たとえば、水道管やガス管の敷設工事をするとき、他人の土地を掘削しなければならないので、土地所有者の承諾が必要だ。私道の下に通っている共用私設管に接続したい場合は、共用私設管の所有者の許可がいる。そのために「ハンコ代」と称して謝礼を包むことがある。ハンコ代は、通常5万~10万円といったところが相場だが、なかには法外な金額をふっかけられるケースもある。私の知っている例では、200万円のハンコ代を要求した地主がいた。