「サンパチ」に戻すと床面積は4分の3

このため「平成ヒトケタの年までに建てられた戸建てのほとんどは違法建築と見ていい」というのが、不動産関係者の間での常識となっている。その後、新規の違法建築が姿を消したのは、バブル経済が弾けて金融機関に対する行政サイドからの不良債権処理の圧力が高まるにつれて、住宅に対する融資基準の見直しが強まり、違法建築に対する融資も認められなくなったからである。

面白いことに、新築に対する融資は厳しいのだが、こうした違法建築の中古住宅の購入に対するローンについては、銀行によって融資のスタンスがまちまちなのだ。メガバンクのなかでも、お堅いことで有名なところは、違法ということであれば100%NG。その一方で、容積率が基準より20%オーバー以内なら目をつぶってしまうメガバンクもある。

話を元に戻そう。ある中古住宅は建ぺい率30%、容積率60%の「サブロク」のはずなのに、実際は建ぺい率40%、容積率80%の大きさの違法建築だったとしよう。それを購入して、上屋を建て直そうとすると、延べ床面積を4分の3に縮小する必要がある。すると、念願だった自分の書斎をあきらめざるをえない事態に陥ることも起こりかねない。

もちろん、われわれ仲介業者はそうした物件を販売する際には、建ぺい率や容積率のことをきちんと説明し、重要事項説明書のなかにも必ず明示する。それを聞き逃して、後でクレームをつけられても、結局のところ責任は買い主の側にある。目の前に建っている中古物件の大きさに惑わされず、自ら建ぺい率や容積率をチェックすることが重要だ。

また、土地を測量し直してみると、登記上の面積よりも狭いこともままある。昔は測量技術が未熟だったからだ。なかには、売り主が面積を“水増し”して登記した悪質な例もある。いまの土地取引は、登記上の面積を基準に代金を決める「公簿売買」が主流なので、どうかご用心を。

大手不動産会社営業マン 三住友郎
これまで2000件以上の土地・不動産の売買の実績を持つトップ営業マン。不動産に関する「抜け道」のエキスパートでもある。
(構成=野澤正毅)
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