安倍首相自身も訪朝に並々ならぬ意欲を示す
鬼門の消費税増税を乗り越え、念願の集団的自衛権の行使容認を閣議決定で成し遂げた安倍政権は、いよいよ独裁体制を強めるのではないかと予感させる。
安倍人気もピーク時ほどではない。安倍首相がやりすぎていることを皆、うっすらと感じているから、世論調査では集団的自衛権の行使容認に反対する声は過半数を超えている。一時は7割を超えていた自民党の支持率も、「支持政党なし」に抜かれた。
それでも野党に目を転じれば、野党第一党の民主党の党勢はまったく回復する気配がなく、支持率は10%に届かない。その他の野党はどうなっているかといえば、名前すら正確に言える人は少ない。
唯一、性格付けがハッキリしているのは公明党と共産党で、どちらも党勢は上向き。特に公明党の場合、安倍政権の暴走を押しとどめる抑止力として評価を高めている。しかし、所詮は与党にとどまるのが最大の眼目だから、自民党とケンカはしても決裂まではしない。今回も「抑止力」というよりも「演技力」にすぎなかった。
結局、与野党を見渡しても、安倍首相にモノを言える政治家は見当たらない。モノが言えない理由としては、内閣改造人事が迫っていること。そして菅義偉官房長官ら強力な黒子の存在である。彼らが与野党の動きに目を光らせて、政局をコントロールし、安倍政権のウイークポイントを潰しているのだ。
さらにハイライトは北朝鮮問題である。この9月、あるいは前倒しで8月中にも安倍首相は北朝鮮を電撃訪問することになりそうだ。
04年、当時の小泉純一郎首相の訪朝で5人の拉致被害者の帰国が実現した。このとき安倍首相も副官房長官として随行している。
あれから10年。今回の訪朝の仕掛け人は内閣官房参与の飯島勲氏。小泉政権で総理大臣秘書官を務めた飯島氏としては、安倍首相に小泉元首相を上回る実績を挙げさせるために演出しているはずだ。
安倍首相自身も訪朝に並々ならぬ意欲を示している。もし安倍首相が訪朝して、小泉訪朝時を上回る数の拉致被害者を取り戻せば、安倍人気は再燃する。その勢いを駆って衆議院を解散して総選挙に打って出れば、自民党が圧勝する――。これが10月解散説の最大の根拠である。
拉致被害者を2桁以上取り戻して、総選挙に持ち込まれたら、支持率が軒並み1桁の野党はもはや打つ手がない。自民党は一人勝ちして、下駄の雪の公明党を必要としなくなる。(まだ温存されている北方領土問題解決という)ロシアのおまけまでつけばいよいよ安倍独裁は歯止めがかからなくなるだろう。その公算は決して低くない。