「元に戻る再稼働」ではなく「減り始める再稼働」

「当面はある程度原発を使うことはやむをえない」として、それは、どの程度であろうか。この点に関しては、12年の原子炉等規制法の改正で、原則として運転開始後40年を経た原子力発電所を廃止することが決まったことが重要な意味を持つ。

この「40年廃炉基準」を厳格に運用した場合には、30年末の時点で、現存する48基のうち30基の原子力発電設備が廃炉となる。残るのは18基だけであり、これらに建設工事を再開した中国電力・島根原発三号機と電源開発・大間原発が加わったとしても、30年末時点で稼働している原子力発電所は20基にとどまる。それを、発電電力量ベースに換算して原子力依存度を算出すると、前述の15%程度にとどまることになる。今後、原発再稼働があるにしても、それは、既存の48基すべてが「元に戻る」再稼働では決してなく、当面30基程度の原発の運転再開が問題となり、その後も運転基数が徐々に少なくなる「減り始める」再稼働であることを、きちんと見抜いておかなければならない。

ここで見落としてはならない点は、原子力発電所が再稼働したとしても、それだけでは、将来における電気料金値上げを回避できるわけではないことである。30年のわが国における原子力発電の依存度について、12年に総合資源エネルギー調査会基本問題委員会は、「ゼロシナリオ」「15%シナリオ」「20~25%シナリオ」という3つの選択肢をとりまとめた。各選択肢に、11年12月に発表されたコスト等検証委員会の発電コストに関するデータを適用して計算すると、30年に電気料金は、10年度の水準と比べて、「原発ゼロシナリオ」では99~102%、「原発15%シナリオ」では71%、「原発20~25%シナリオ」では54~64%、それぞれ上昇することになる。このような料金水準の上昇が生じるのは、コスト等検証委員会がLNG(液化天然ガス)価格を原油価格とリンクさせて計算し(いわゆる「油価リンク」)、その基になる原油価格が趨勢的に高騰すると見込んでいるためである。

電気料金の再値上げを回避するためには、原発の再稼働だけでは不十分である。アメリカからのシェールガスの輸入、日韓協力による天然ガス取引の東アジア・ハブの構築、コストが低廉な石炭火力の活用などにより、火力発電用燃料費を削減することにも、あわせて力を尽くさなければならないのである。

なお、電力システム改革による電力市場の全面自由化は、それ自体がつねに電気料金を引き下げる効果を発揮するとは限らない。電力自由化とは料金決定を市場に任せるということであり、料金水準は、その時々の電力をめぐる需給関係によって決定づけられることになるからである。

(平良 徹=図版作成)
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