健全な民主主義を機能させるのは野党の役割

【塩田】「1強多弱」といわれる現在の政党政治の状況をどう受け止めていますか。

【前原】前回の総選挙の結果は、3年3ヵ月の政権担当に対する国民の厳しい通信簿ですから、真摯に受け止めなければなりません。ですが、安倍政権誕生後の1年半で、負の側面もたくさん出てきています。健全な民主主義を機能させるのは、野党第一党のわれわれの役割です。野党をまとめていく上で、民主党の使命は大きいと思います。

安倍政権となった後、野党はもっと政策面で協力ができればよかったと思う。その点については不十分な面があった。ただ、私が担当している行政改革については進展がありました。私は今、民主党行財政調査会長を拝命していて、行革について民主・維新・結い・みんな・生活の党・新党改革の6党で行革推進のプラットフォーム法案をつくりました。政策面でもっと野党間で協力できないかと思い、代表、幹事長、政調会長に提言して、私が政策責任者となってスタートした。行革については野党間で一定のまとまりのあるものができたと思っています。基本的な考え方のすり合わせができています。将来の協力、合流に向けて、政策面で一致するための努力を続ける必要があると思います。

【塩田】民主党には官公労を支持基盤にする人もいます。維新には「野党再編といっても、官公労系はダメ」という声が強い。実際に行革を進める段階になると、抵抗勢力や既得権益集団との戦いが勝負となりますが、壁が大きいのでは、という懸念があります。

【前原】政権担当時、われわれは事業仕分けや公共事業費の削減など、行革はかなり進めてきました。国交相のとき、公共事業費の削減に先鞭をつけて3年間で32%、カットした。政調会長のときは厳しいやり取りをして、国家公務員の給与を7.8%下げた。連合(日本労働組合総連合)と激しく議論しましたが、実際にやり遂げました。支援団体の中に公務員の組合があるから、行革はまったくできないという見方は、ステレオタイプの批判です。政権担当期にやったことを見てもらえば、成果を上げたものもあります。

【塩田】今後、野党再編を進める上で、「行革」が中核的なテーマとなりそうですか。

【前原】その一つですね。無駄を削る行革、国と地方の関係の見直しは大きなテーマだと思います。それから財政再建と歳出改革の問題、経済政策、安全保障政策、エネルギー政策ですね。今の安倍政権は小泉純一郎元首相の政権につながる新自由主義の面がありますが、それとは一線を画する道です。新たな雇用、新たな成長分野を見出すような方向性で、野党は基本的に一致できるのではないかと私は思っています。

【塩田】安倍首相の手で次の解散・総選挙が行われた場合、安倍首相は、総選挙後に宿願の憲法改正を実現するため、総選挙で進んで改憲の是非を争点にするのではないかと見られます。そうなれば、野党側も憲法問題に対して答えを書き、国民に示さなければなりません。今後、野党再編を進めるときに、憲法改正問題が与野党の対立軸として大きなテーマになるのではないかと思われます。

【前原】われわれは改憲の中身について是々非々です。創憲という立場で、今の憲法をすべて守るということではありません。議論に乗れると思います。憲法改正については、社会党や共産党以外は、全部、「いいよ」と言うんじゃないですか。それぞれの党が憲法改正について案を出せばいいわけですから、憲法改正は総選挙の争点にはなり得ないと思う。

憲法改正の発議には、衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成が必要です。選挙の争点にしなくても、自民党と公明党が憲法案を出してくれば、われわれは中身の議論に応じます。われわれの賛同を得なかったら、3分の2に届かないから、ドンと構えていたらいいんですよ。こちらは、まず自民党と公明党でまとめて下さい、と言えばいいんです。多分、まとまらないんでしょう。それでいいですよ。野党再編との関係でいえば、憲法改正の中身についてはある程度、議論しておけばいいんじゃないですか。

それよりも安倍さんが進める経済政策で地方の凋落、格差の拡大、社会の二極分化がさらに進むことにどう対抗するかが選挙の争点になるべきです。国民は社会保障や日頃の生活に重きを置いています。憲法改正は一義的に国民の関心事にはなりません。