海外駐在を経験すると人材は飛躍的に成長
取引先や仲間企業からの誘いであれば、比較的に進出しやすい。次のようなことの多くを教えてもらえるからだ。
まず、最低限の現地での仕事の確保。工場設置場所の選定、機械設備の搬入と設営、並行して現地人の採用の開始、技能や就業規則などの初期教育、工業団地での日本人駐在員の情報交換会へのデビューによる情報の入手と、自社の紹介(最初の営業活動)。
こうしたことと並行して、自分の住まいの確保。運転手がパッケージされたレンタカーの契約。通訳の採用。取引先の確保・拡大のための会社案内を持参しての挨拶回り……。
以上のようなことが同時的に進む。日本で働いていたときはとりあえず「担当業務」というものがあり、生産管理をしている人間が経理事務をしたり、営業の人間が設計管理や材料の調達を担ったりはしない。しかし海外での現場はそうしたことのすべてが「担当業務」としてスタートする。自分が判断し決断しなければならない。設備投資を含め、自分の裁量と決定が基本である。
2013年の秋に、広島県の安芸高田に本社のある精密板金プレスのメーカーの、タイ工場立ち上げの聞き取りをしたが、駐在員氏は「合弁相手の経営者とか相談相手はいるが、とにかく忙しくて、寝ている時以外はいつも仕事をしています。たまに30分くらい時間があくと、かえって心配になったりします」と語っていたが、よくわかるのである。
つまり海外駐在は、日本では20年、30年と積み重ねる経験を2年、3年に凝縮する。それゆえ人材の育ち方が急速(大化けする)だ。
それは経営者自身も同様だ。特に第二創業的な進出は、まず進出国(地域)の選定のために、4カ国か5カ国の工業団地などを歩いてみる。その結果、自分の会社の適地や不向きな地域を把握する。初期投資の概算。現地駐在員の選定(基本的には自分が中心になる)……。このようなことを進めるためには、各種の「見学会」等への参加が必要だ。もちろんどの国にも各種のコンサルタントはいる。彼らは会社設立の事務手続きなどの代行や協力もしてくれる(費用はかかるが)。