かつて工業製品が主体だったメード・イン・ニッポン。今やカニカマからコンドームまで多岐にわたって世界中の人に愛されている。
瞬間接着剤の代名詞ともいえる「アロンアルフア」。当初は工業用、釣り具用として販売していたが、1971年に現在一般に広く知られている黄色い容器の家庭用瞬間接着剤「アロンアルフア」は誕生した。
そのころ、まだ世間に瞬間接着剤の概念は浸透していない。そこでゴルフボールの上で回転している独楽に「アロンアルフア」を垂らすと瞬時に固まるシーンなど、さまざまな手法を凝らしたテレビCMを展開した。瞬間に接着する様子と、その接着力の強さを繰り返し訴求することで、当時まだなじみの薄かった瞬間接着剤というものを家庭に浸透させていったのだ。
実は、東亞合成では、日本とほぼ同時期にアメリカでも家庭用瞬間接着剤の販売を開始。「クレイジーグルー」という商標で、日本と同様、ユニークなCMで印象づける手法を取った。
「一番最初のCMはヘルメットを被った男性が登場し、ヘルメットと鉄骨の間にクレイジーグルーを垂らす。そして鉄骨を釣り上げると、その男性が宙に浮くというインパクトのある内容で話題になりました」と機能化学品事業部の吉永正氏。
まるで手品のように瞬時に固まる瞬間接着材は、「クレイジー」の名の通り全米を驚かせた。こうしてユニークなCMが話題となり、新商品ながらスタートダッシュは良好。その後もDIYの盛んなアメリカで安定した支持を得ることとなる。現在、日本の瞬間接着剤市場における「アロンアルフア」のシェアは約8割だが、「クレイジーグルー」はアメリカで一定して4~5割のシェアを獲得している。
ちなみにこのCMに登場したヘルメット姿の男性は、「ハンギングマン」として、今でもクレイジーグルーの商品キャラクターとしてパッケージに描かれている。
72年からは香港にも「Aron Alpha」として進出。日米で高い支持を得ている実績もあり、上市から累計で10億本以上を販売し、香港市場でも約8割のシェアを得るというガリバー製品に成長した。
そのほか、現在世界30カ国以上で販売されているアロンアルフアは、より強力なタイプや金属、ゴム、プラスチックなど用途に合わせた中身の違いから、ジェルタイプ、ブラシ付き容器、小分けタイプなどさまざまな種類を展開。日本国内だけでも、100種類近いラインアップがあるのだが、販売する国のニーズに合わせて、さらに進化を続けている。