つまりTPPへの加盟は、生保や農協のような既得権者にとってマイナスなだけであって、一般の消費者にとってプラスになることが多いことは間違いないのです。つまり、消費の回復は、安倍さんがTPPを梃子にどこまで日本の構造改革に踏み込めるかにかかっていると言っていいでしょう。
さて、資産運用の話に移りますが、私は今後の資産運用を考えるひとつのヒントを、先日シンガポールで見つけました。
シンガポールには100円ショップのダイソーが進出していて、大変に繁盛しています。しかしダイソーの商品といえば、ご存じの通り、ほとんどが中国製。しかも、2ドルショップ(シンガポールドル)なので日本円で140円ぐらい。日本の1.4倍の値段です。私はシンガポール人の友人に思わずこう言いました。
「チャイナタウンに行けば、同じモノが10分の1の値段で買えるぞ」
すると友人は、こう答えました。
「同じ中国製でも、日本人がセレクトしたモノは品質が確かなのさ」
かように、シンガポールではいま、「日本」あるいは「日本人」が大変なブランド価値を持っており、これは、東南アジア全域に言えることなのです。
私は基本的に、持ち合いの多い日本株はお勧めしていませんが、もしも皆さんが日本株に投資したいとおっしゃるのなら、シンガポールにおけるダイソーのように、海外で“日本ブランド”として認知されている会社の株を買うといいと思います。東南アジアで強い企業としては、化粧品の資生堂や日用品のユニ・チャーム、花王。北米で強いのはやはりトヨタ、日産、ホンダでしょうか。
変化球としては、百貨店も面白い。国内では不振ですが、伊勢丹や高島屋などは、東南アジアですでに大変なブランド・イメージを確立しています。
では、どの業界に投資をすべきかと言えば、皆さんが一番よく知っている業界に投資をすればいいのです。つまり、化粧品に詳しい人は化粧品業界に投資をし、自動車に詳しい人は自動車業界に投資をすればよい。なぜなら、知らない世界のことは判断のしようがないからです。
20年前、私は投資の神様、ウォーレン・バフェット氏に会ったことがあります。なぜ、超安定株である日本の電力会社の株を買わないのかと質問してみると、氏はこう答えたものです。
「私は日本だろうとどこの国だろうと、原発を持っている電力会社には絶対に投資をしない。なぜなら、原発の仕組みはよくわからないからだ」
これが卓見であったことは、私たち日本人が一番よく理解できるはずです。
1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、丸紅、モルガン・スタンレー、ABNアムロ、ベアー・スターンズに勤務。現在はM&A、民事再生、地方再生まで幅広くディールをこなす一方で、「ぐっちーさん」のペンネームでブログを中心に活躍。著書に『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』(東邦出版)、『ぐっちーさんの本当は凄い日本経済入門』(東洋経済新報社)がある。