日銀はすでにこれ以上緩和しようのないレベルまで緩和をしてきており、これ以上やっても効果がないことは明らか。理由は簡単です。いくら金融緩和をしたところで、市中の銀行からお金を借りる人がいないからです。お金がマーケットに出回らずに銀行に溜まっている限り、金融緩和をしても消費は増えません。
えっ、どうして銀行からお金を借りる人がいないのかって? それは皆さんが一番よくご存じのはずでしょう。
図2をご覧ください。これは日本の輸出額と平均給与の推移を表しておりますが、あれっ、なんか変ですよね。1995年から2009年は一貫して円高だったのに、ほぼ一貫して輸出が増え続けています。直近のデータを見ても、震災でちょっと凹みはしましたが、円高によって日本の輸出が減ったという事実は存在しないのです!
つまり、「日本の景気が悪化したのは、円高で輸出が減ったせい。円安になれば輸出が増えて景気が回復する」という人口に膾炙した説明も、実は、真っ赤なウソなのです。そして、図2のオレンジ色の折れ線グラフを見てください。これは、日本人の平均給与の推移を表していますが、一貫して右肩下がりですね。輸出が一貫して増加してきたにもかかわらず、日本人の給与はここ15年ほど一貫して減り続けてきたのです。これこそ、銀行からお金を借りてまでして何かを買おうとする人が現れない最大の理由なのです。
給与がどんどん減っていけば誰もが生活防衛的になり、お金を使おうとしないのは当たり前です。ローソンが社員の年収をアップすることが評判になりましたが、これはあくまでも一時金のお話。本給がアップしなければ、お金を使う気にはなりません。そんな状況で金融緩和したところで、消費を押し上げる効果がないことは目に見えています。
では、財政投資はどうでしょうか。まさに自民党的な古臭い政策ではありますが、国民も企業もお金を使わない現在のわが国において、少なくとも政府だけはお金を使おうというのですから、一定の効果があることは否定できません。
問題なのは、3番目の規制緩和を軸にした成長戦略です。もしも安倍さんが自民党の族議員たちを説き伏せて、小泉さん並みにやるというのなら、かなりの効果が期待できると私は思っています。そして、安倍さんが規制緩和の梃子にしようとしているのがTPPというわけです。