かつて工業製品が主体だったメード・イン・ニッポン。今やカニカマからコンドームまで多岐にわたって世界中の人に愛されている。
日本では誰もが知るヨックモックの「シガール」。サクサクとした葉巻状のクッキーで、ギフトとしても人気が高い。これが今、アラブ首長国連邦(UAE)で人気を博している。2012年初出店から現在、UAEの店舗数はドバイ・モールなど8店舗。今後20店舗を目安に店舗を増やす予定という。
すべて日本での製造・梱包のため、輸送コストなどの影響で現地では日本の約2.5倍の価格設定だが、それでも売れる。来日した際には、UAEのマダムたちが箱単位で大量に購入する姿も珍しくないという。
いったいなぜ、中東でこれほどまでに人気なのか?
「そもそもUAEは甘いもの好きの国。こってりと濃厚な味わいのお菓子が多いなか、『シガール』の上品な甘さやサクサクとした繊細な口当たり、そして個別包装が新鮮に受け入れられたのでは」と語るのは広報チームの上山由利子氏。
UAEでは食べ物は、試食をしてから購入を決める習慣がある。バターをふんだんに使用し、小麦粉はつなぎ程度の量しか使わない軽やかな口どけに、試食した人は感嘆の声を上げるという。また、オフィスや家庭でトレーなどにお菓子を並べて客をもてなす習慣があり、これに対応して、箱入りではなく、あらかじめベネチアングラスや螺鈿を使用した高級なトレーにお菓子を並べた商品を用意。富裕層に好評だ。
こうした現地の習慣を取り入れつつも、店舗の設えや接客は日本のスタイルを踏襲。スタッフが両手でドアを開け、「こんにちは」「いらっしゃいませ」と日本語で挨拶して客を迎え、帰りは出口まで見送り深くお辞儀をする。スタッフは現地採用だが、和風の小物をディスプレーした清潔な店内、丁寧な包装など、日本流のもてなしを徹底させている。
同社の海外進出は86年。米国、ビバリーヒルズのニーマン・マーカスに出店したのがスタートだ。現在、米国ではサックス・フィフス・アベニューなど高級百貨店を中心に約50店舗を展開し、高級ギフト菓子として定着している。アジア圏ではタイの百貨店と台湾の路面にも店舗を構える。そのほかにも世界各国から商談が舞い込むが、多店舗展開やドミナント戦略は試みていない。
「我々が大切にしているのはブランド管理。当社のビジョンを理解し、共有していただけるパートナーを見極めている」(上山氏)
日本ならではの繊細な味と“おもてなし”の心が広がっている。