まずガスを廃止。冷蔵庫は「棚化」

大庭家のユニークな点は、節約生活をはじめるにあたって、まずガスを止めたところだ。

大庭聡恵さん

「節約生活をはじめる前からキッチンに立つたび違和感を覚えていたんです。電気かガス、どちらかひとつでいいのでは、と。うちはプロパンガスを使っていたので、ガス代が月に1万5000円もかかっていたんです。冬に床暖房をつけると2万円を超えることも。試しにホットプレートで料理してみたらうまくいきました。2000円ほどでキッチンフライヤーを買ったら、揚げ物もできました。子どもたちのお弁当を作るのも問題はありませんでした」

大庭家では何かをやめるときには、メリットとデメリットを子どもたちにも説明する。たとえば、電気が使えなくなれば、電気製品は一切使えなくなる。一方、ガスを止めると、ガスレンジと床暖房、さらに風呂が沸かせなくなる。どちらを選ぶか。子どもたちは「新しい入浴方法」に興味をもった。

「夫が電気でお湯を沸かすことができるヒーターを見つけてきてくれたんです。シャワーは水だけになってしまいましたが、子どもたちは電熱棒でお湯が沸く様子をおもしろがってくれ、たらいにお湯を張って体を洗うのも、専用の浴槽をもった気分で楽しいようです」

ちょうど風呂の給湯器が古くなり、更新のタイミングを迎えていた。給湯器代は約10万円。一方、ヒーターは約2万5000円で、1日80円程度の電気代で風呂を沸かせる。

ガスの次にやめたのが、冷蔵庫。東日本大震災の計画停電がきっかけとなった。

「親戚が福島に住んでいることもあり、私たち家族に何ができるだろうと考えました。福島原発では首都圏で使う電気を発電していたわけですから……」

棚化計画――。大庭家では、冷蔵庫をやめることをそう呼んでいる。電源を抜かれ、扉を外された冷蔵庫を“棚”として利用しているからだ。そして、棚と化した冷蔵庫は“田中くん”の愛称で家族に親しまれている。