ハイブリッド商法:カニバリゼーションの心配はない

売上高前年度比25%増!
イトーヨーカドーのネットスーパーでは、すでに138店で展開、2011年度の売上高は前年度比25%増の350億円、12年度は420億円を計画している。

リアルで成功しているビジネスをインターネット上でも展開し、ハイブリッドで収益拡大を目指すとカニバリゼーションを起こすだろうと多くの人は懸念しています。しかし私が知る限り、リアルで成功しているビジネスをハイブリッドにして失敗した例はほとんどありません。

ハイブリッドにしたら失敗すると一番言われたのはネットスーパーでした。郊外商圏の1番店でネットスーパーを始めても、きっと既存顧客を食い合う結果になるだろうと。しかし実際には、売り上げを大きく伸ばす結果が報告されています。

その理由は、いままでそのお店を利用していなかった人がネットスーパーを利用するようになったからです。ネットにリアル店舗が食われると思いきや、いままでリアル店舗を利用していなかった人が利便性に惹かれ、ネットスーパーを利用するようになったのです。

よく考えてみれば、郊外のスーパーに買い物に出かける客層はネットリテラシーの高い層とはあまり被らないと思われます。だからリアルで成功しているビジネスはネットにも展開し、バーチャルでも儲けて商機を広げるべきです。

お金をもらって、働いてもらう:飲食店での導入がおすすめ

商品の選択を顧客の手に委ね、事前に決済する利益モデルで、顧客からお金をもらって、働いてもらう仕組みといえます。代表的な例がPCメーカー、デルです。デルが設定したPCの基本モデルに対し、顧客にネット上でカスタマイズと発注、決済という“仕事”をしてもらったうえで製造するという方法でデルは躍進しました。

このモデルを適用すると面白いのが飲食店です。デルのウェブサイトでは複数の選択肢が並んでいて、希望する仕様を選んでいくとPCがカスタマイズされ、自分好みのPCを注文できるようになっています。同じように飲食店も顧客がウェブで今日のメニューをチェックし、気に入ったものを事前に注文し決済できるシステムをつくるのです。ウェブで事前に注文したら割引になる、といったらみんな利用するでしょう。お店にとっては需要が読めるようになり、ロスが少なくなるメリットもあります。苦戦している各地の観光協会や商店街などが飲食店のポータルサイトをつくり、各店でユーザーが事前注文できるシステムをつくれば、地域にお客様を呼び戻すきっかけにもなるでしょう。

マーケティングプランナー
村山 涼一

1961年生まれ。広告会社、出版社を経て独立。近著『100円の不良在庫を5000円の商品に変える方法』は9/7にDVD版も発売。
(構成=宮内 健)
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