「残業代ゼロ」法案可決は、経済界の「悲願」

経済界の悲願であるホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の適用除外)制度が成長戦略に盛り込まれることになった。

現行の労働基準法の労働時間の上限は1日8時間、週40時間(法定労働時間)。それを超えて働かせる場合は1時間につき25%以上の割増賃金(午後10時以降の深夜残業の場合は+25%の計50%、休日労働は+35%の計60%)を支払うことを義務づけている。

簡単に言えば、こうした残業代支払いを義務づける規制を撤廃するものだが、政府案は「少なくとも年収1000万円以上の職務範囲が明確な高い職業能力を持つ労働者」を対象とすることにしている。

対象者は絞られるが、1947年制定の労基法の労働時間規制に風穴を空けたことになり、今後、対象者が拡大していく余地も秘めている。

経済界がホワイトカラー・エグゼンプションの導入を叫び始めたのは、04年のアメリカの同制度の大幅な規則改正が実施されたのがきっかけだ。

経団連は05年に導入に向けた提言を発表し、第一次安倍政権下で法案作成の作業が進んでいたが、メデイアや野党の「残業代ゼロ」批判を受けて法案提出を断念した経緯がある。

それが今回、経済界の強い要望でまたぞろよみがえったのである。導入すべきと主張する理由を要約すれば以下のようになる。

「労働時間の長さと成果が一般に比例しない頭脳労働に従事するようなホワイトカラーに対し、一律に工場労働モデルとした労働時間規制を行うことは適切とはいえない」

「ホワイトカラーの労働には、仕事の成果と労働時間の長さが必ずしも合致しないという特質がある。したがって、ホワイトカラーの労働に対しては、労働時間の長さ(量)ではなく、役割・成果に応じて処遇を行っていく方が合理的である」(以上、05年6月の日本経団連の提言より)

また、政府の産業競争力会議は労働者のメリットとして「時間ではなく成果で支払う働き方によって、労働時間に関係なく個人が自由に働く時間と休日を決めることができる」と強調している。