ジレンマへの2つの攻め方とは

ヤマハのグローバルサイト

ヤマハのようなグローバル企業のウェブサイトは、多くの場合、現地主導で構築されてきた。初期のインターネットは通信速度も遅く、ホームページといってもモノクロの文字情報を中心としたものだった。しかし、こうしたささやかな情報提供は、グローバル本社が扱う問題としては小さすぎた。そのなかで各国・地域の支社や代理店は、必要に迫られ、販売店の所在地や連絡先などを、それぞれが独自のやり方でインターネット上に提供し始めた。グローバル企業のウェブサイトは、こうした経緯から各国・地域で分散管理されていることが多い。

インターネット上の情報は世界中からのアクセスが可能だが、同じ英語圏のなかであっても、国や文化が異なれば、関心を集める商品ニュースも違えば、好まれるページデザインも情報提示の構造も異なる。こうした事情を考えると、ウェブサイトについては、各国・地域の支社や代理店が、それぞれに現地に適応した情報提供を続けていけばよいように思える。

しかしヤマハは、こうした個別適応を続けることには問題が多いと考え、改革に着手した。端的に言えば、分散管理を続けていては、グローバル企業であることの強みがつくれないのである。

各国・地域で事業を展開しているグローバル企業のひとつの強みは、ローカル企業が得られない多様な経験をいち早く蓄積し、知識創造に結びつけられることである。しかし、各国・地域のウェブサイトがあまりにバラバラで共通の枠組みを欠いていると、各国・地域の担当者間での効率的なやり取りは難しく、知識の蓄積や共有は進みにくい。また、グローバル企業のもうひとつの強みは規模の経済性だが、これも各国・地域のウェブサイトがバラバラでは、多くは期待できない。

グローバル企業にとって、現地適応は大切だが、これが行きすぎると、各国・地域でグローバル企業は、ローカル企業と同等の条件で競わなければならなくなる。これでは、せっかくのグローバル展開が自社の強みに結びつかない。そのため近年になって、各国・地域の自社ウェブサイトのトーン&マナーの統一、共通データベースの導入、サーバーの集約化など、システム対応に取り組み始めたグローバル企業は少なくない。