しかし、実態は違うのである。初めて参加した握手会は、それはもう衝撃の連続だった。まず、参加者が多様である。もちろん男性が多いが、世代も見た目も様々で、わりと「普通」な人が多い。女性も多い。小さな子供も多く、大抵は女の子だ。アイドルに憧れているのだろう。
ちなみにAKB48の「全国握手会」では、最初に「障がい者」の方が優先的にメンバーの握手レーンに並び、かなりの列がつくられる。その後、女性・子供の優先列が続く。一般のファンが握手できるのはその後、1時間近くは経ってからである。参加すると、こうしたファン層の多様性に驚かされる。
いざ始まると、大勢のファンが一様に楽しそうな笑顔を見せていることに圧倒される。わずか数秒程度アイドルと握手するだけで、こんなに大勢の人々が、ここまで幸福感に包まれた笑顔に変わるとはどういうことなのか。握手が終わった人たちは、夢中になって、「さっき××ちゃんとこんなこと話してきたんだよ!」などと周りの人と感想を語り合っている。これはどうしたことなのか。
そしていよいよ自分が握手に行く番である。いつもはテレビやネット越しに応援しているメンバーに「会いに行く」ことができる。目の前に、自分の「推しメン(応援しているメンバー)」が実在している。その衝撃は計り知れないものがある。さらに、「いつも応援しています」と直接声をかけることができる。メンバーからは「応援してくれてありがとうございます!」という声が返ってくる。その手は握力で満たされている。メンバーの目はあまりにもキラキラと輝いている。わずか数秒とはいえ、そこにおけるコミュニケーションの「手応え」はあまりにも強烈なのだ。
握手会の本質は、「アイドルの女の子の手を握っただけで喜んでいる」といったところなぞにはない。もちろんそうしたファンもいるだろう。しかし本質的なのは、全力で夢に向かって頑張っているメンバーに対して、応援の声を直接かけることができること、その「手応え」なのである。それはブログやツイッターといったソーシャルメディア越しで得られるものよりも、はるかに体験として強烈だ。やはり「リアル」に勝るものはないのである。