「短い期間では成功するが、長い期間では通用しない」
広岡がヤクルト監督時代、凄みを見せつけたのは、上田阪急との日本シリーズ第6戦(後楽園球場)。3勝2敗と王手をかけながら、マウンドで滅多打ちにあう西井哲夫に我慢をしいた。3対12と大敗し、スタンドのヤクルトファンからは怒号が乱れ飛んだが、広岡は涼しい顔だった。エース松岡を第7戦に温存していたからにほかならない。日本シリーズ史上、これほどあからさまな捨てゲームをつくった監督は、後にも先にもいない。
思惑どおり第7戦に勝ち、日本一を成し遂げたが、翌年最下位に転落する。管理野球に音を上げた選手たちが、松園尚巳オーナーに泣き付き、退団を余儀なくされた。
「広岡君のやり方は、短い期間では成功するが、長い期間では通用しない。ヤクルトはもう広岡君を必要としない」
日本シリーズでは存分に読みを発揮したが、監督人生の見通しは甘かったようだ。
【広岡達朗監督 レギュラーシーズン通算成績】
966試合 498勝406敗62引き分け 勝率5割5分1厘
966試合 498勝406敗62引き分け 勝率5割5分1厘
(文中敬称略)※毎週日曜更新。次回、若松勉監督