第二次世界大戦で、ウクライナ人は敵味方に分かれて戦った。〈ソ連軍の中にはウクライナ人200万人が含まれていたし、ドイツ軍の中にも30万人のウクライナ人が含まれており、同一民族が互いに敵味方になって戦った〉(黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』中公新書、2002年、234頁)。このナチス・ドイツ軍に所属したウクライナ人がユダヤ人虐殺に積極的に加担した。ウクライナ民族至上主義を掲げ、反ユダヤ主義的傾向の強い政治エリート(特に「スボボダ(自由)」党員)がウクライナ新政権に加わっている。「スボボダ」は国際基準で、ネオナチに分類される。大統領選挙にも、「右派セクター」のドミトリー・ヤロシュ党首が立候補している。日本経済新聞の石川陽平記者は、ガリツィア地方の中心都市リビウ(リボフ)発の記事で、〈数多い候補者の中で、民族主義を掲げる極右政党「右派セクター」のヤロシュ党首も注目だ。右派セクターはロシアから過激派と激しく敵視され、欧米もヤロシュ党首の政治的影響力の拡大を警戒している。〉(3月31日「日本経済新聞」電子版 ※1)と報じた。重要な指摘だ。3月17日、露国営ラジオ「ロシアの声」は、ヤロシュ党首が、〈ロシアと衝突が始まった場合、「極右セクター」は、ロシアと欧州を結ぶガス・パイプラインを破壊する、と述べた〉と報じた。ヤロシュ氏ならば、このような行動に及んでも意外性がない。

ウクライナ人のロシア観には大きな差異がある。キエフ国際社会学研究所(出典、露誌『ノーボエ・ブレーミャ(新時代)』3月17日号。同誌はプーチン政権に批判的で、リベラルな報道で定評がある)によると、「ウクライナのロシア統合に関する世論」は、以下のようになっている(統合に賛成、単位はパーセント)。

▼西部
・リボフ州 0
▼中央部
・キエフ市 5.3
・キエフ州 6.4
▼東部
・ドネツク州 33.2
・ルガンスク州 24.2
・ザパロジエ州 16.7
・ハリコフ州 15.1
▼南部
・オデッサ州 24.0
・クリミア自治共和国 41.0

この結果からしても、東部、南部とそれ以外の地域でのウクライナ人のロシア観は決定的に異なる。