生涯賃金で考えると、さらにその差は拡大する。
例えば、22歳で就職して年収240万円からサラリーマン人生をスタートさせ、定年まで一定割合で収入が増えると仮定。途中、結婚し妻は専業主婦、子ども2人の家族構成という条件で試算してみよう。
定年時の年収が2000万円になった人の場合、生涯賃金の合計は約3億2000万円となる。この間の所得税は約2448万円だ。これに対し、定年時の年収1200万円の人は、生涯賃金が約2億3000万円で、所得税総額約862万円。生涯年収では両者の開きは1.4倍だが、支払う所得税は2.8倍となる。収入が増えるほどに重税感が募るのは、累進課税の大きな問題点ともいえる。
「所得税の最高税率70%の時代もありました。さすがにこれでは頑張る気になれない。その後、徐々に税率が引き下げられ、現在は住民税(一律10%)も含めた最高税率は50%となりました。ただ、課税所得が1800万円を超えると、半分は税金で消える。所得の再分配という点ではやむをえないとしても、経済を活性化させる意味ではやや問題があるかもしれませんね」(宝田氏)
借金まみれの国家財政。いずれ増税は避けられないことは誰もが知っている。所得税率の引き下げは絶望的だ。
※すべて雑誌掲載当時