「働く貧困層」の問題は隣国・韓国でも深刻だ。1997年の通貨危機を機に進められた雇用の流動化政策で、2007年の大卒者のうち正社員は半数以下となった。就職にあぶれた20代の非正規職の平均月収は約88万ウォン(約6万円)。貧困にあえぐ若者たちは「88万ウォン世代」と呼ばれ、新自由主義を掲げた盧武鉉政権の失政の象徴として、政権交代の要因になった。
一方、日本では昨年末から製造業を中心に「派遣切り」が相次ぎ、非正規職の問題が一気に噴出。住居付きの職場を転々としていた彼らのなかには、ホームレスとなる者もいる。行き場を失った数百人の労働者は、民間の有志によって催された東京・日比谷公園の「年越し派遣村」で新年を迎えた。
後手にまわる政府の対応をよそに、「派遣村」のほか、地元の自治体や民間企業なども失職者の受け皿になろうと手をあげている。なかでも異色なのは、大衆演劇業界。旅役者の沢竜二さんは、全国約150の劇団に声をかけ、300人程度を受け入れると発表した。
「昔から旅役者の一座は、困っている人の『駆け込み寺』の役割を果たしてきた。衣食住の心配はないし、仕事が見つかれば、劇団を離れてかまわない。当初の月給は3万円くらいだが、やる気次第でいくらでも稼げる」(沢さん)
芸歴2~3年の若手でも月収40万円以上が可能。人気座長ともなれば1日で100万円を稼ぐ。沢さんはいう。
「旅の一座は慢性的に人材不足。うちだけじゃなく、やる気がある人はどんな業界でも大歓迎のはずですよ」
(図版作成=ライヴ・アート)