2月上旬、麻生太郎首相が公務員制度改革の工程表を定めた。要点は公務員の定年延長と天下りの防止である。国家公務員はおおむね50代半ばで肩たたきにあい、外郭団体や所管業界に天下る。“小泉行革”で公共工事が削られ、情報公開や競争入札が進んだため、天下り先は年々減っている。定年延長は公務員も望むところだった。
しかし、これから増える50代の職員の処遇をめぐり、甘利明行革担当大臣と谷公士人事院総裁の間で火花が散った。公務員は勤め続ければ、誰でも管理職の給料がもらえる。現在、国家公務員の76%が係長以上の待遇なのである。大企業では係長以上の社員は20%に過ぎない。役人側はこの特権を死守したい。だから、「管理職の定数管理」という権限を人事院から内閣へ移すことに猛反対している。
人事院の谷総裁は、「給与額ごとの定数設定の役割を移すと中立性が損なわれる」と抵抗、工程表を決める会議への出席を拒んだ。甘利大臣はやむなく谷氏欠席のまま、工程表を強引にまとめた。これにて一件落着、と思いきや、麻生首相が工程表承認のあいさつで、変なことを言い加えた。
「人事院につきましては、残る論点について調整を進められたい」
人事院の抵抗にお墨付きを与えたようなものだった。これは官僚出身の官邸スタッフが麻生首相を抱きこんだためと見られている。自らが任命した大臣を支えず、浅いつきあいの官僚のささやきでころっと寝返る麻生首相。甘利大臣の悔しさは余りあるだろう。
(ライヴ・アート=図版作成)