不足する原材料を、EUは内外での自主鉱山の開発や域内における再利用エコシステムの構築で乗り切ろうと目論んでいる。しかし、そのいずれの手段もヒト・モノ・カネのあらゆる面で多大なコストを要するものだし、そもそも軌道に乗るとしても長い歳月が必要となる。構想は立派でも、結局は、絵に描いた餅で終わる可能性が高い。

価格競争の過程でEVの生産が合理化していけば、そもそも用いる原材料の量も少なくなる。モノが普及するためには市場における競争こそが不可欠なプロセスだが、域内製のEVの普及にこだわるEUは、そうした現実的な手段を取ることができない。これでは連続的な市場の拡大は見込めず、どこかの段階で自ずと拡大に歯止めがかかる。

電動化は二者択一では進まない

EVとHVを含めた従来型の内燃機関(ICE)車を二項対立かのようにとらえる論者は依然として少なくないが、経済性に任せる形で住み分けを図ることの方が合理的だろう。HVも技術革新を受けて、かつてに比べると温室効果ガスの排出量はかなり減っている。一方、価格はHVの方が安いし、ロングドライブにもHVの方が勝っている。

ハイブリッド車のメーターパネル
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです

一方、EVはEVで、コンパクトカーとしての需要を着実に取り込んできた実績がある。ユーザーに選択肢を与えることで、従来型の温室効果ガスを多く出すICE車の買い替えを促すことこそ、本来の温暖化対策となる。しかしEUは、そもそもEVシフトで“産業覇権”の掌握まで狙っていたため、そうした冷静な判断ができなかったようだ。

中国の“ダンピング”を批判するEUだが、言い換えれば、そのダンピングがなければEVのグローバルな価格は今の水準よりも上振れが必至となる。EUは中国製EVに関税を課し、域内製EVとの間で“公正”な競争を図る姿勢だが、排ガス規制強化や補助金給付といった行政的な手法に依存している以上、持続可能か定かではない。

自動車の電動化はメガトレンドだが、とはいえ現在の第2次EVブームの賞味期限が長いとは言えない。むしろコロナショック後の第1次ブームの調整圧力(中古車への対応など)を十分に消化しないまま第2次ブームを迎えたことで、次の調整の谷が深くなるリスクが出てきている。いずれにせよ、EVの普及は単直線とはなり得ない。

日系メーカーはHV技術に秀でているが、EVに関しては慎重だったこともあり遅れている。とはいえ、EVはもはや中国メーカーの牙城であり、それを崩すことは極めて難しい。EVとHVの住み分けを念頭にHVに集中することも戦略だし、引き続き変化していく自動車市場を見据えて、様々な車種の開発に努めるべきなのかもしれない。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

(初公開日:2026年9月3日)

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