首脳会談で旗が交互に置かれている理由

国際儀礼(プロトコール)の基本として、来賓(主賓)は主催者(ホスト)の右側に着席、あるいは立つ。主催者から見て右側は「優位」の位置とされ、賓客への敬意としてその席を譲るのが原則である。一方、米国国旗の配置には、Flag Codeに基づく別の原則があり、米国国旗は他国旗よりも右側、つまり観客から見て左側に掲げることが定められている。

ここで人の立ち位置と国旗の配置に「ずれ」が生じる。二国間会議で、来賓が主催者の右側に立つ場合、観客から見れば来賓は左側に立つことになる。両国の国旗を1本ずつ配置すると、観客から見て左側には米国国旗が置かれる。

その結果、来賓が米国国旗の前に立ち、米国側は相手国の旗の前に立つことになる。一見すると誤りにも見えるが、これは儀礼上の正しい配置である。来賓を右側に置く国際儀礼の原則と、米国国旗を旗の右側に置くFlag Codeの原則を同時に満たした結果として生じる、視覚的な矛盾である。

この「ねじれ」を和らげるため、国務省儀典局では、二国間会議の際に両国の国旗を2組ずつ(計4本)用意することが多い。国旗を交互に背景へ配置することで、どちらの側に立っていても、自国旗を背負っているように見せるためである。

国歌演奏中はスタッフも作業の手を止める

外交行事において国歌は、その国を代表する重要な要素である。米国が関わる式典では、国歌演奏時の参列者の所作も、式典運用上の確認事項となる。

二国間の式典で国歌を演奏する場合、米国主催の行事では「来賓国歌」から先に演奏し、その後に米国国歌が続く。客人を先に立てる、外交上の礼譲に基づく順序である。

日本語では「国歌斉唱」と表現されることが多いが、英語の式次第ではpresentation of the national anthemと案内されるのが一般的である。これは参列者全員が歌うことを意味するのではなく、国歌演奏を告げる表現である。実際には軍楽隊や管弦楽団による演奏が多く、参列者は起立し、演奏が終わるまで所作を保つ。

大久保泉『知られざるアメリカ外交儀礼』(角川新書)
大久保泉『知られざるアメリカ外交儀礼』(角川新書)

司会の案内を合図に参列者は起立し、演奏終了まで着席や移動を控える。レセプションなどで作業中のスタッフも、演奏中は動きを止めるのが基本である。

起立:案内を合図に起立し、演奏終了まで姿勢を保つ。
脱帽:制服でない男性は帽子を取り、右手に持って左肩の前に置く。
右手:制服でない者は、右手を左胸に当てる。
向き:国旗が見える場合は国旗の方を向く。見えない場合は、演奏が行われている方向を向く。
静粛:演奏中は私語や不要な動作を控える。

制服着用の軍人は、国歌演奏中は敬礼が原則である。退役軍人や私服の現役軍人については、式典側の案内に従い、敬礼または民間人に準じた所作を取る。

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