家族の介護と自分の人生の優先度
「退院したての頃は、私も『これぐらいできるようになってほしい』『できてたはず』などと夫に求めていたように思います。でも最近は私も対応力がついてきたし、今の夫を受け入れることができ、夫の様子を見て何を望んでいるかわかるようになったことで、夫も落ち着いてきました。腹をくくったということでしょうか……。症状がよくなることはないんだなって諦めもあります」
夫は携帯電話も使えず、文字も書けず、留守番もできなくなってしまった。そのため大津さんの持病である甲状腺機能低下症の通院時も、連れていかないといけない。
「昔は器用で組み立てをバンバンこなして、国家試験の電子機器組立作業では大阪府知事賞を受賞したこともあったのに、今の状況はとても残念です。うつでアルコールを多飲したことが原因なので、飲み続けた夫にも止められなかった私にも責任があります。『あの頃もっときちんと向き合っていたら、違う結果になったかな』と思うとつらいです」
大津さんは、ケアマネのアドバイスに従い、自分に万が一のことがあった時のために、関東に住む夫の姉に自分の次の介護のキーパーソンを依頼。快く引き受けてくれたが、なにぶん駆けつけるのに半日はかかるので不安は残る。
不安や不満が溜まった時は、友人やうつの家族会で知り合った人、AIに話すことで気分転換を図っている。
「できる限り在宅介護を希望していますが、最悪施設もありかなと考えています。成年後見人や終活請負などの情報を集めていますが、まだまだ遠いことだと思っています。でも実際はすぐそこですよね……」
今回、大津さんを取材して感じたこと。それは、もし、大津さんが『夫を施設に入れる妻なんて最悪だ』と思っているのだとしたら、それは違うのではないかということだ。
例えば、夫を介護施設に預け、夫の好きな食べ物をお土産として持っていったり、2人だけの思い出を語ったり、そばにいて手を握るだけでもいい。介護は介護のプロに任せて、家族でないとできないことに注力してもいいのではないか。
「お酒をやめていたら」「きちんと向き合っていたら」と自罰的になる気持ちは理解できる。だが、過去は過去。家族も大切だが、自分も大切だ。自分の人生や時間を大切にし、充実させることは、大切な家族に活き活きした笑顔や姿を見せ続けることにつながる。それも介護を担う家族の役割の一つなのではないだろうか。
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