Tシャツにオムツ姿で行方不明

夫の退院が決まると、大津さんは在宅介護の準備を整えるため、2026年1月~3月末まで介護休業制度を利用した。

2025年5月に受けた要介護認定の結果、夫は要介護4。訪問看護を週3回利用し始めた。

ただ、デイサービスは、59歳でまだ若かったことと、入院中に粗暴行為があったため、「落ち着いたことが証明されない限り、利用するのは難しい」とケアマネジャーから通達があった。

ヘルパーからも、介護休業制度利用中は妻である大津さんが家にいるため、利用は難しいと言われた。大津さんは夫から目が離せず、休息する暇がなかった。

26年3月下旬。トイレの失敗が繰り返されたため、「布団を汚すから、夜だけオムツしてほしい」と大津さんが頼むと、夫は「すみません」と言ってスムーズに受け入れてくれた。

「『なんでせなあかんねん』とか言う時もありますが、なるべく丁寧に『お願いします』とか『助かります』とか言って履いてもらいます。オムツをしていても、尿意を感じる時はトイレに行こうとします。でも、行くときは尿意があるので何をしに来たのか覚えているのですが、トイレをし終わった後に『次はどうしたらいい?』となり、私が家事をしていても呼ばれるのがつらいです」

そして、猛暑だった今年の8月にも、夫は行方不明になった。

2月に起きた夜中2時の散歩事件以来、玄関に人感センサーを取り付けて、夜間、夫が勝手に外に出たら音が鳴るようにしていたが、昼間はオフにしており、寝る前に初めてスイッチを入れ忘れたのだ。

夫がいないことに気づいた大津さんは、15分ほど近所を探したが見つからず、近所の交番に届ける。すぐに警官が無線で情報を流すと、20分ほどで発見された。

灯台下暗し。夫はマンション内の別の階にいた。保護された時、Tシャツにオムツ姿。大津さんは、持って出た短パンをすぐに履かせた。

おむつを手にしたおむつを履いた男性
写真=iStock.com/andriano_cz
※写真はイメージです

妻に向けられた夫の暴力

大津さんが一番困っているのは徘徊だった。最悪、命に関わるからだ。

「トイレの場所もわからなくなってきていますし、夜だけオムツをしていても、ときどき漏れて背中まで濡れていることもあります。最近は昼寝をしていても失禁するようになりました。歯磨きも入浴も一人ではできません。短期記憶障害もあるため、毎日は『今日は何曜日だ?』『何月だ?』『仕事は?』と5分おきに聞かれることもあり疲弊します。挙げたらきりがありません」

夫は「9月6日までに復帰できなければ会社規定により退職」と言われており、59歳で選択退職となった。

一方、大津さんも夫の介護のため退職を申し出ているが、何度も引き止められていた。会社からの提案で、介護休業と介護休暇、有給休暇などをフルで使って、年内いっぱいまで休めることになる。

「ありがたいことに『辞めなくていいように』と会社は動いてくれましたが、高校卒業から40年間、私はもう十分働いたので、気持ちが職場復帰に向かうことはありませんでした」

大津さん夫婦にはある程度の貯金があったため、2人で暮らしていくには心配していないというが、唯一存命の義母の施設費用を援助するとなると「少し不安だ」と話す。

今年2月の精神科の退院後から、夫は見違えるように食欲が戻った。酒とタバコをやめた影響かもしれない。

大津さんは、夫が退職したことを機に、デイサービスの利用をしたい旨をケアマネジャーに打診。しかしケアマネは慎重だった。なぜなら、入院中の粗暴行為だけでなく、大津さんに対して暴力を振るったことがあったからだ。

それは今年4月頃のこと。訪問介護のリハビリが終わったあと、突然夫が「ここにあったやつがない! どーゆーことや!」と激怒し始めたのだ。

「私が何を言っても、何を尋ねても『いらん! 出ていけ!』と言い、私が出て行こうとしたら、服を掴まれて40分も離してもらえませんでした。しばらくしたら夫は元に戻りましたが、夫はそんな行動をしたことを忘れても、私は忘れられないのでしんどいですね」

ケアマネジャーに相談すると、相談中も忙しなく動き回る様子から事態の重大さを察知し、ようやくデイサービスを探してくれた。

体験で様子を見た後、週2回、3時間の利用からスタートすることになった。現在介護サービスはそのほかに、週2回の入浴介助と、訪問看護を週2回利用している。