「厄介なクレーマー」=カスハラではない

「カスハラ」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、「店員を大声で怒鳴る」、「自分の要求が通るまで何時間も電話を切らせない」、「担当者の謝罪では納得せず、店長を呼んで土下座を迫る」というような、傍若無人で理不尽な要求を通そうとする姿だろう。

そのイメージはおおむね正しいが、単に「店側にとって厄介なハードクレーマーだから」という理由だけで即カスハラ認定されるわけでもないのだ。

法律上のカスハラは、「顧客など事業に関係する人の言動」が、「仕事の性質や事情に照らして社会通念上許される範囲」を超え、「従業員の就業環境を害するもの」、というすべての条件を満たすものが当てはまる。

ここでいう「顧客など」には、一般消費者だけでなく、取引先担当者や施設利用者なども含まれる。そして店頭での言動に限らず、電話やインターネット上のやり取りも対象となるのだ。

そしてこの10月1日から、企業には従業員をカスハラから守るための措置が義務づけられる。

現場従業員に「カスハラには毅然と対応せよ!」などと命じるだけで、実際はカスハラ客の対応を丸投げしているようではダメだ。クレーム内容を会社が確認し、必要な改善は行う。その一方で、暴言や理不尽な要求などのカスハラ行為が発生した場合は、組織として誰が応対を引き取り、どこで応対を終えるのかまで決めておく必要がある。「毅然とした対応」の主語は、従業員個人ではなく事業主なのである。

カスハラと認定される「2つの要件」

カスハラの定義だけを聞くと、堅苦しい表現で難しそうに感じるが、要点は2つだけだ。「相手の要求内容は妥当か」、そして「その要求のしかたは妥当か」である。

たとえば、店で買った商品が故障していて、返品や交換を要求することには何の問題もない。しかし、その際に担当者を長時間罵倒すれば、要求内容が正しくても「要求のしかた」は担当者の許容範囲を超えるだろう。逆に穏やかな口調であっても、商品代金を大幅に上回る高額な慰謝料を要求したり、「担当者をクビにしろ!」などと執拗に求めたりすれば、それは「要求内容」に問題がある。

店側にミスがあった事実は消えないが、ミスがあったからといって、担当者を執拗に責めたり人格否定してもよい免罪符にはならないというわけだ。

もっとも、「強い口調で不満を述べた人は全員カスハラ客」だとも言い切れない。店員側の説明が要領を得ず二転三転したり、約束した期日に代替品が届かなったりすれば、客が苛立つのも無理はない。厚労省の指針では、顧客側の言動ばかりでなく、その目的や経緯、企業側の対応、頻度や継続性などを総合的に考慮するよう求めている。消費者の権利を守ることも、対策を講じる際の前提なのだ。