1回の電話でも中身によってはアウト

言葉の意味を推測して、現場の担当者がその場しのぎの約束をする必要はない。「ご希望の対応を具体的に教えてください。会社として確認してお返事します」と、要求を見える形にするのが先だ。

返金や補償でも同じである。壊れた製品の交換や、実際に生じた損害の相談は当然あり得る。他方、料理が一皿遅れたからといって、その日の同席者全員を無料にしろといった要求にまで至ると、さすがに釣り合いを欠く。企業は何が起き、何を根拠に、どの対応を求められているのかを確かめたうえで、応じられる範囲を説明すればよいのだ。

オンラインでのやりとりの場合はどうだろう。

たとえば「昨日の件、どうなりましたか」と問い合わせフォームから一通送った翌日、客が電話をかけた。さらに回答期限を過ぎても連絡がなく、もう一度フォームを送った。この3回程度のメッセージ送信なら当然カスハラにはならない。一方で、たった1回の電話でも、殺すと脅したり、担当者を激しく侮辱したりすれば、それはもうカスハラだ。回数ではなく、どんな伝え方をし、どれほど続いたかが問題なのだ。

問題は、担当者の就業環境が悪化したか

たとえば、配送遅延を調べると言われたまま返事がなく、再度確認のために連絡することは何の問題もない。一方で同じ要求を短時間に何十通も送り、別々の部署に電話をかけ続けて担当者の仕事の手を止めてしまったりすれば、さすがに業務妨害にもなり得るため、カスハラ対応に切り替えざるを得なくなるだろう。厚労省も、同じ質問や電子メールを執拗に繰り返すことをカスハラ典型例に挙げている。

長電話の場合は、単に通話時計だけでは測れない。複雑な事象や高齢者への説明には時間がかかることもあるだろう。だが、回答済の話にいつまでも納得せず、繰り返し説明を要求し、切ろうとする担当者を何時間も拘束すれば、許容範囲を超える。確認調査が必要なら期限を切って折り返し連絡をする約束をすればよいし、話が一巡したら「本日の回答はここまでです」と管理者が伝えればよい。

このように、カスハラ行為は単に回数や時間だけで区切るのではなく、具体的な言動によって担当者の就業環境が悪化したかどうかが判断基準となる。必要な合理的配慮をおこなうことと、脅迫や人格攻撃を止めることは両立するのだ。

【図表】「クレーム」と「カスハラ」の違い一覧表
筆者作成