希望となる近年のアニメーション

なお、最後に、希望という観点から、サブカルチャーの新たな流れにふれておきたい。

瀬木比呂志『法律家が見た日本社会の病理「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』(KADOKAWA)
瀬木比呂志『法律家が見た日本社会の病理 「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』(KADOKAWA)

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』〔押井守おしい まもる監督、伊藤いとうちひろ脚本。2008年〕、『カラフル』〔原恵一はら けいいち監督、丸尾まるおみほ脚本。2010年〕、『魔法少女まどか☆マギカ』〔新房昭之しんぼう あきゆき監督、虚淵玄うろぶち げん脚本。2011年〕(表層のキャラクター文化の部分ではなく、後記のようなその深層をみるべき)、『おおかみこどもの雨あめと雪ゆき』〔細田守ほそだ まもる監督、奥寺佐渡子おくでら さとこ、細田守脚本。2012年〕、『映画 聲こえの形』〔山田尚子やまだ なおこ監督、吉田玲子よしだ れいこ脚本。2016年〕、『夜明け告げるルーのうた』〔湯浅政明ゆあさ まさあき監督、吉田玲子、湯浅政明脚本。2017年〕、『君たちはどう生きるか』〔宮﨑駿みやざき はやお監督、脚本。2023年〕等の近年のすぐれたアニメーション作品群がそれである。

「日本独自の罪の文化」への強い志向

『若おかみは小学生!』〔高坂希太郎こうさか きたろう監督、吉田玲子脚本。2018年〕、『ジョゼと虎と魚たち』〔タムラコータロー監督、桑村くわむらさや香か脚本。2020年〕等の作品も上記に準じる(アニメーションの製作は多数の参加者を束ねる一種の擬似的共同体構築作業であり、中核スタッフの力と結束が実写の場合以上に重要なので、本書でも、脚本についてだけは全部記しておいた)。

これらは、いずれも、一神教的な世界におけるそれとは異なったかたちで、存在とその傷、広い意味での正義、罪、責任、個の選択、他者との関係の再構築を、そのような意味での「非宗教的な贖罪しょくざい、救済(リデンプション、redemption)、恩寵おんちょう(grace)」をテーマにしている。

かつての「共同体との関係における恥の文化」とは全く異なった「日本独自の罪の文化」への志向を強くもつという意味で、これらのアニメーションは、「前記のような映画作品群につながりうる一筋の底流、水脈」を示している。

興味深く、また、未来への一つの可能性をも感じさせる秀作群といえよう。

鹿目まどかフィギュア
社会現象を巻き起こしたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の主人公、鹿目まどか(写真不詳/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

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