技術が進み、便利になったからといって、プライバシーに関する私たちの感覚に合わないものは、普及しない。その意味では、インターネット上のツイッター、フェイスブックなどのSNSも、まだまだ過渡期にあると言えるのではないか。
恋人との写真を気楽に載せて、それが「流出」して騒ぎになった、というようなニュースに接すると、プライバシーの設計は、いまだ成熟していないという思いを新たにする。
そんな中、北米を中心に新しいサービスが注目されている。スタンフォード大学の学生らが2011年に創業した「スナップチャット」。フェイスブックが、30億ドル(約3000億円)で買収しようとしたが、断られたことでも話題になった。
スナップチャットのサービスは、その究極のプライバシー保護に特徴がある。メールでも、写真でも、動画でも、送って、それを相手が見ると、データが消えてしまう。しかも、サーバーにも残らないという。流出しようにも、そもそも記録が残らないのである。
スナップチャットのユーザーは、13歳から23歳の、若い世代が中心であるという。次代のインターネットがどうなるか、一番敏感に動く層。プライバシーに関するネットの考え方が、変わりつつあるのかもしれない。
ユーザーに関するデータを蓄積し、それぞれに合ったサービスを提供しつつ進化するという、従来のSNSの思想とは真逆のスナップチャットの方向性。フェイスブックによる買収を断ったことを含め、今後もしばらくは台風の目になりそうだ。
結局、私たちユーザーが求めているものは、安心、安全なのかもしれない。インターネットは、人の心を離れては存在しえない。一回り、二回りして、時代の動きは今、人間の心の奥底を見つめている。
(写真=PIXTA)