28歳のとき、世界の物乞いや障害者をテーマにした『物乞う仏陀』でデビュー。以来、アジアを中心に児童虐待、売春などを追い続けてきた。現在、36歳。20冊に及ぶ著書はいずれも固定概念にしばられない多面的な取材をベースに独自な視点で描かれている。東日本大震災を扱った『遺体――震災、津波の果てに』は映画化された。
本書は昨年9月中旬に7冊刊行された新書創刊の1冊。これまでのものとは作風が異なり、自叙伝のスタイルをとっている。
恵まれた環境のもとに育ち、中学生の頃から将来はモノをつくっていく人間になることを漠然と思い描き、大学に入学してから文章を書いていくことを決意。卒業後は就職せずにアルバイトをしながら渡航費用を捻出して海外の貧困地帯を歩いた。
「前々から20代から30代まではノンフィクションを中心にしてやっていくということを決めていました。自分に経験をつけたかったんです」
なぜ、この時期に半生を振り返ったものを書いたのか。
「自分の気持ちを整理したかったからです」
これからは小説も書いていくという。転機を後押ししたのは先の大震災である。
「ノンフィクションとしてあれほどの題材は少ないです。今後、数年間小粒のノンフィクションだけをつくり続けるより、自分の進化をかけて小説の分野に挑戦したいと思ったんです」
とはいえ、ノンフィクションからフィクションに軸足を移しても、うまくいくとは限らない。
「だからこそ小説で勝負してみたい」
最近は児童書の分野にも進出している。
「半年ぐらいの間に児童書を2冊出版する予定です。子供たちの心を揺さぶり、人生の糧となるようなものを書きたい」
自称・感動病。ノンフィクションも小説も児童書も感動さえあればジャンルの枠組みなどは小さなもの。人が生きていくうえで価値観とはなにか。本書ではそれを教えてくれる。