日本人に不足する、投影=プロジェクトという営み

東京大学大学院情報学環教授 
姜尚中氏

<われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか>

ゴッホと並び称される19世紀末の天才画家、ポール・ゴーギャンの畢生の作品のタイトルが、現代に生きる日本人の心理にぴたりと重なることに、私は驚きを禁じえません。

2011年8月、私は、東日本大震災がもたらした悲劇に、まだ日本中が打ちひしがれているさなか、『あなたは誰? 私はここにいる』(集英社新書)というタイトルの絵画評論を上梓しました。いま、日本人は非常に苦しい状況に置かれています。世界経済はあたかも株価のように乱高下を繰り返し、しかもそれは1年、2年周期の景気循環による変動ではなく、どうやら世界の構造的な変化に根ざすものであるらしい。