「水分をお酒で摂る」は逆効果で危ない!
「適切で効果的な水分と塩分の摂取」については、皮肉にも?食いしん坊ほど誤解している人が少なくないかもしれません。たとえば、酒好きの人から「水分摂取はビールやお酒で。たくさん飲んでいるから大丈夫」という声を聞くことがあります。アルコール飲料は何となく水分が摂れている気になるかもしれませんが、熱中症の予防としては最も縁遠いものです。まずアルコールには利尿作用があります。さらにアルコールを体内で分解する過程で水分を必要とするので、水分として体内に入った量のうち一部が相殺されて、吸収量はさらに減ります。
ビールに関していうと、中に含まれるホップにも利尿作用があるので、もうトリプルパンチです。「1リットルのビールを飲むと、1.1リットルの水を失う」と言われる所以はこういった理由によります。サウナで汗をかいた後に飲むビールは気分的には整っているかもしれませんが、体にとっては、実は何一つ整えられていないのです。
お茶やコーヒーはどうでしょう。残念ながらナトリウムはほとんど含まれておらず、それどころか利尿作用のあるカフェインが含まれるので、せっかく水分を摂取しても一部が薬理作用の影響で尿として失われてしまうのでやはり推奨はできません。日本人はスポーツドリンクよりもお茶を好む方が多いので、普段の習慣に流されないようにする必要があります。
また、果物には水分が多く含まれているので良いとか、栄養バランスの取れた食事が予防につながるとか、様々な記事が散見されますが、日よけをするなどして体温を下げたり、しかるべき時に適切な水分を摂る方が影響は大きいと考えます。
点滴を打つのも経口補給も効果速度は同じ
日本人は点滴がダイスキなのか、ちょっとした夏バテでも「点滴希望で来ました」という方が、救急外来によくいらっしゃいます。
点滴というのは一般的には20~100ml/h程度で投与されます。本当に具合の悪い人はこの限りではありませんが、少なくとも自分の足で病院まで来ることができる方には、これくらいの速度です。これは、言い換えれば、おおよそ日本酒をお猪口で飲むくらいの速度で水分を摂るようなものです。それだったらペットボトル1本をガブッと飲んだ方が早いと思いませんか?
水分を口から飲んでも直接血管内に投与しても結果は同じです。点滴をしたら元気になった感じがするのは常温の液体を血管内に入れることで、37~38℃程度に上がった体温が平常温に下がるからです。
熱帯夜の中、わざわざ足を運んで救急にかかって点滴を打ってもらうより、家で冷ためのシャワーを浴びてペットボトルを飲んだ方が早いし良い、ということですね。コスパもタイパも優れています。これは熱中症に限った話ではないので、ぜひ知っておいていただきたいです。
気温が高い日に外に出るのは億劫ですが、適切な予防に努め、適切な対処さえ知っておけば熱中症のリスクは必ず下げられ、楽しく夏を過ごすことができます。元気な状態で夜を迎え、美味しい料理や旨い酒に舌鼓を打ち、グルメを満喫してください。
教える人
平松 玄太郎 先生
埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


