4年で売上高30%、純利益270%増。4期連続で最高益更新と好調の理由は――。
スナック菓子最大手の快進撃が続いている。業績はもとより2011年上場から、株の動きも好調。すべては09年のトップ交代による構造改革から始まった。

創業家筋からのトップ交代

カルビー 代表取締役会長兼CEO 
松本 晃 

1947年、京都市生まれ。京都大学農学部修士課程修了。72年4月伊藤忠商事入社。医療機器販売の子会社を経て、93年ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人へ。同社の社長、最高顧問を歴任。2008年カルビー社外取締役に就任後、09年6月より現職。

「カルビーという会社にはいまだに山ほど成長の余地がありますが、なぜか儲ける熱意だけが足りなかった。つまり稼げる余地はもともとあったわけで、私は潜在的な力を引き出しただけのことです」

目をしばたたかせながら、おっとりとした関西弁でこう語るのはカルビーの代表取締役会長兼CEO、松本晃である。

2009年6月、カルビーの創業家から請われて、松本がジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人最高顧問からカルビーのCEOに転じて以来、成長の鈍化に悩んでいたこのスナック菓子業界の老舗は、まるで魔法にでもかけられたかのように業績を向上させてきた。

連結の売上高と純利益で松本以前、松本以後を比較すると以下の通りだ。

・売上高(100万円)
Before 137377(2008年度)
After 179411(2012年度)

・純利益(100万円)
Before 2523(2008年度)
After 9440(2012年度)

4年前比で売上高は約130%、純利益は実に約370%もの伸びを記録している。スナック菓子業界が少子化の影響を大きく被る業界であることを考え合わせると、この異様ともいえる業績は“松本マジック”とでも呼ぶほかない。

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カルビー売り上げ推移

いったいどんなマジックを使ったのか。相変わらず目をしばたたかせながら、松本は、その核心をたった一言で言ってのけた。

「要するに、会社組織の中にいる人間は、買うのは好きで売るのは嫌いだということ。これ、万国共通の現象なんです」

どうやら松本は、従来のカルビーの「買い方」と「売り方」を、根本から変えてしまったらしい。