まさかの「『ダンチュウ』って何ですか?」
②「昔こんなのがあったけど知らないでしょ?」
「昔ポケベルっていうのがあって、数字を言葉代わりにしてたの。知らないでしょ?」っていう定番ネタがあるじゃないですか。でも、令和の時代に戦時中のモンペの話をして、「知らないでしょ」と若い人に話しかけても、「知らないです」と言われて終わりですよね。
「昔こんなのがあったんだけど、知ってる?」と、あなたがもし若い人に言っていたとしたら、きっと「つまらない話だ」と思われているかもしれませんね。
僕のバーで出しているカレーが、以前「ダンチュウ」(雑誌)のカレー特集で紹介されたことがあります。
「料理を出しながらその料理を説明すると、お客様はより美味しく感じる」という法則があるんですね。たとえば「こちらのチーズはフランスのノルマンディー地方の」と説明すると、説明しないで食べるよりも美味しく感じるんだそうです。だから僕はカレーを出すたびに、「こちらのカレーは『ダンチュウ』のカレー特集で紹介されて」と言うようにしていました。
ところが最近、「『ダンチュウ』って何ですか?」と言われることが多いんです。最初は「え? ご存じないんですか?」なんて言っていましたが、あるとき気づきました。これは、僕たちが若いときに上の世代のおじさんたちが「ゲバ棒を知らないの? 最近の若者はものを知らないなあ」と笑っていたのと同じ構図だと。
当時、僕自身「なんでそんなの知ってなきゃいけないの?」と感じたはずなのに、今度は自分が同じことをしていたわけです。
それに気づいてからは、「『ダンチュウ』をご存じないんですか?」はもう言わないことにしています。
③「あの頃は良かった」
「昔はもっと人のつながりがあって良かった、最近はインターネットのせいで人間関係がギスギスしている」
「俺の若い頃はメールなんてなかったから、電話するか手紙を書くか直接会いに行くしかなかった。だから今より心と心で話すことができた」
そんな話を飲み屋で語るおじさんっているじゃないですか。
本当にそうでしょうか。考えてみましょう。
たとえば、恋愛の告白のシーンを想像してみます。
体育館裏で告白するなら、まず友達に頼んで相手を呼び出してもらい、目の前で「好きです。付き合ってください」と伝えなければいけません。相手の顔を見て気持ちを伝えるのは、まさに「心と心のぶつかりあい」だったはずです。
電話で告白するなら、相手の自宅の電話番号を調べるところから始まります。かけてみたらお父さんが出てきて、「いつも学校で親しくしている林と申します。今度のテストのことで絵里子さんに伝えたいことがあるのですが」みたいに大人びたやりとりも必要です。その場で電話を切られてしまうこともあったでしょう。
手紙で告白するなら、下駄箱でしょうか。みんながいない時間を見計らって下駄箱に行き、可愛い封筒や気の利いた文章、綺麗な字まで用意しなければいけません。


