がん患者向けのポスターに批判が殺到

一つの炎上事件でありながら、関係者が負っているリスクの重みは決して均等ではなく非対称的であり、巧みにリスクをコントロールできている者と、そうではない者の差が浮き彫りになっているのではないでしょうか。

Netflixアプリアイコン
写真=iStock.com/stockcam
※写真はイメージです

炎上のコストを最も重く背負う主体と、炎上によって話題性や利益を得られる主体が一致していないのが、この「リスクの非対称性」の本質です。

同様の構造的な失敗は、他の省庁においても発生しています。厚生労働省が映画とのタイアップで作成したがん患者向けのポスターで「ママがもうこの世界にいなくても」というタイトルを大きく掲げたことに批判が殺到し、8月24日には謝罪と撤回に至りました。

個別の経緯や背景はそれぞれ異なるでしょうが、コンテンツの性質の精査や潜在的リスクの検証を怠ったまま公的機関が安易に関与してしまう構造自体は、完全に共通していると考えられます。

多少過激な表現や世間の耳目を集めそうな企画であっても、話題になれば政策の認知が上がるだろうという、行政の置かれた特別な立場やそのリスクに対する甘い見通しは、結果として大手エンタメ企業のプラットフォーム構造に利用されたとすら映ります。

公的信頼という、大きな対価を支払う結果となったのです。

世間から注目を集めることはリスクも伴う

少なくとも役所がお墨付きを与えるということの意味合いは、民間企業の単なる営利目的の広告宣伝とは明確に異なりますし、本来の広報活動(Public Relations)が目指すべき趣旨とも異なるはずです。この企画者だけでなく、それを決定した役所側は、自らの安易な判断に対する責任を認めるべきでしょう。

公的広報において優先されるべきは、政策本来の意図を正確に伝え、組織に対する国民の信頼を損なわないことです。SNS等で「バズること」や世間の目を引くことは、むしろ「慎重に扱うべき極めて高いリスク要因」であると捉える危機管理能力が求められます。

単なる企画者にとどまらず、行政組織としてどこまで多角的な検証を実施できたのか、その真価が問われています。

民間企業と行政組織とでは、「炎上」という同一の現象に対するリスク許容度が根本から異なります。その危機管理の視点を緩めたまま、行政が民間の「話題性」に不用意に乗っかることは、公的信用という行政にとって核心的な資産を損なう重大リスクとなるのです。

【関連記事】
なぜ皇室に1男2女をもたらした「良妻賢母」が嫌われるのか…紀子さまを攻撃する人たちの"本音"
地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
11体のラブドールと暮らし"正しい性行為"を楽しむ…「人より人形を愛する男たち」が奇妙な生活を始めたワケ
「日本円の紙くず化」へのカウントダウンが始まった…高市首相が狙う「借金1342兆円を帳消しにする」禁断の処方箋
ケネディ大統領と破局したら次は弟へ…「恋多き女」マリリン・モンローを"メンヘラ化"させた2つの大事件