しかし、青木氏は「現実的には難しい」と話す。
「税務署が動くのは、大金が動いたときか、相続が発生したとき、つまり親が死んだときです。親が生きていれば親子で口裏を合わせて『貸与だった』といえますが、片方が死んでいるので、貸与の証明が困難です」
前都知事のように借用証をつくっておけば貸与の証明になるという考えも甘い。贈与税の時効前には貸与の証明書類が必要だが、逆に時効成立後は贈与だったことを証明する書類が必要になる。それらを状況に応じて慌てて偽造すれば、見破られる可能性が高い。事前に本物の貸与証明書類、贈与証明書類を2通用意して、時効成立後は貸与証明書類を破棄するという“悪知恵”も、時効前に税務調査があって2通見つかったら言い訳のしようがない。どちらにしても、税務署の目はごまかせない。
書類による証明ができなければ悲惨だ。贈与税の時効前なら、税務署は贈与と認定して、贈与税とペナルティの加算税や延滞税を徴収するだろう。時効後に親が亡くなった場合は貸与とみなし、親の相続財産にくわえたうえで相続税を徴収することになる。
「税務署は、財産を隠そうとする人たちには、もっとも重い税金をかける。贈与の基礎控除額年間110万円をコツコツ贈与したり、最大1000万円が非課税になる住宅取得等資金の贈与の特例を利用するなど、節税のやり方はある。正攻法が身のためです」
(図版作成=ライヴ・アート)