人知を超える存在に懸念を感じたら

人間が生み出したものでありながら、それがいつしか人知を超えた力を持つようになり、人間の手には負えなくなってしまう。そんな存在を「怪物」と表現することがよくあります。例えば核兵器は人間が科学の力で創り出した怪物と言えるでしょう。人類を滅ぼすほどの威力を持った悪魔の兵器を、人間はみずからの手で生み出してしまったのです。

最近はAIに対して同様の懸念を抱く人も増えているようです。特にChatGPTをはじめとする対話型生成AIツールが普及してからは、なんでもAIに質問して答えを得ようとする傾向が強まっているため、「人間がAIに支配されるのではないか」と不安を持つ人がいるのも理解できます。自分の意思で判断しているつもりでも、実はAIに操られているとしたら、確かに恐ろしい怪物のように思えるかもしれません。

古典文学の世界にも、「人間が科学の力で生み出した怪物」を象徴する存在がいます。それがイギリスの小説家メアリー・シェリーの代表作『フランケンシュタイン』に登場する人造人間です。誤解されることが多いのですが、フランケンシュタインは人造人間を創り出した博士の名前であり、当の怪物には名前がありません。とはいえフランケンシュタインと聞けば、誰もが顔や体につぎはぎのい目がある傷だらけの大男を思い浮かべるほど、怪物としてのイメージは広く浸透しています。

(構成=塚田有香 イラストレーション=米山夏子)