渡り廊下に塗った粉で転倒

転んだのは偶然だったわけではない。鎌倉後期に成立した『五代帝王物語』には、次のように記されている。

「近習の人女房なとを倒ふして笑はせ給はんとて、弘御所に滑石の粉を板敷きに塗りをかれたりけるに、主上悪しくして御顚倒有けるを、御犬の立まはりまはり、如法に吠え参らせたりけるこそ、前表にて有りける。やがて御悩つかせ御座して、取りあへず御大事に及けり。併天魔の所為なり」(『群書類従』所収)少々難解な文章なので、わかりやすく意訳しよう。

「近習や宮廷の女房たちを転ばし、その姿を見て笑おうと、四条天皇は御所の渡り廊下にスベりやすい蠟石ろうせきの粉を塗ったところ、自分が誤ってスベって転んでしまった。これを見た犬が激しく吠えるので、倒れているところを発見され、運び込まれて床についたが、そのまま亡くなってしまった。まさに天魔の仕業しわざのようだ」