「もう一つの穴」が同時進行する恐怖

さらに、もう一つの穴が同時進行しています。8月10日、個人の所得(収入)に応じて給付金の額を変える新しい仕組み「所得連動給付」をめぐる国と地方の協議が初会合を迎えました。全世代型社会保障改革担当相でもある城内実さんが出席し、国側は財政負担の分担を求める考えを示しています。

これに対し全国知事会の村岡嗣政山口県知事(地方税財政常任副委員長)は「われわれ急きょ示されて大変驚いている」「国が制度設計を行い、全国一律に進めていく国策なので、まず国が全面的に担うことを基本的に考えていただきたい」と反発しました。まあ、ビックリするよね。私だってビックリしましたから。

政府側は公金受取口座を登録している対象者への「申請不要給付」、支給額算定ツールの無償提供、コールセンター設置など、事務負担の軽減では譲歩する姿勢を見せています。ただ財政負担については分担を求める構えを崩していません。2027年度に先行導入、2029年度に本格導入という日程です。

政府が示した申請不要給付の背景

この政府側がさらっと出してきた「申請不要給付」ですが、これができるのは2021年成立の公金受取口座登録法で、預貯金口座をマイナンバーに紐づけて国に登録する仕組みが用意されているからです。

そして、その登録者を一気に積み増す作業が、まさに今月から走っています。2023年のマイナンバー法等改正で創設された「行政機関等経由登録の特例制度」が2026年8月に始動し、公金受取口座が未登録の65歳以上の年金受給者およそ1600万人に対して、日本年金機構が簡易書留で意向確認書を順次送っているところです。郵送などの予算は104億円、作業は2027年2月頃まで続きます。

この事業の特徴はオプトアウト方式であることです。デジタル大臣・松本尚さんの説明どおり、同意する人は返送手続きが一切不要。嫌な人だけが45日以内にはがきを返す。返事をしなければ同意とみなされ、年金の振込口座がそのまま公金受取口座として登録されます。

松本尚デジタル大臣
松本尚デジタル大臣(写真=デジタル庁/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

朝日新聞が8月11日に報じたところでは、デジタル庁の2022年の会議で有識者から「勝手に登録されたとの印象を持たれないか」と慎重論が出て、2023年の国会でも野党が「あまりに乱暴だ」と問題視した経緯があるそうで。