なぜ北が「上る」、南が「下る」なのか
ところで北がなぜ「上る」なのかというと、平安京の正門である羅城門から御所を目指して北へ向かう方向を「上る」と表しているのだろうと思うわけですが、実際には御所の北側の地域でも北を「上る」、南を「下る」と書きます。
これについては同志社女子大学の吉海直人教授が興味深い見解を示されていて、「かつて東寺の五重塔のてっぺんは、北大路通りと同じ高さだといわれてい」たのだそうです。
そして実際に、五重塔の高さは55m、そして平安京の南端である東寺と、平安京の北側、北大路通辺りの高低差は54mほどであり、確かに一致します。京都市は北から南に大きく傾斜している構造になっているんですね。なので北に向かうことを「上る」と称したのだろう、というのが吉海教授の説です*1。
※1:https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2018-03-27-10-10
このように、仕組みさえ理解すればけっこう分かりやすい通り名方式ですが、もちろんそんな良いことだらけではありません。京都市役所の住所をもう一度思い出してください。
・寺町通御池上る:寺町通を、御池通との交差点から北上したところにある
・上本能寺前町488:上本能寺前町の488番地
でしたね。「寺町通御池上る」についてはこれまで説明してきました。それでは「上本能寺前町488」の部分は一体何なのでしょうか?
「寺町通御池上る」がなくても郵便物は届く
実は、この部分はこの部分で、れっきとした住所表記なのです。中京区にある町名で上本能寺前町、そこにある488番地の土地、つまり「京都市中京区上本能寺前町488」という、他の地域でもよくある地番表記の住所そのものなんですね。
「寺町通御池上る」を書かなくても、これだけでちゃんと郵便物は届きます。というか「寺町通御池上る」は、488番地がある辺りの上本能寺前町、というざっくりとした表現と等価であり、つまり通り名表記というのはかなり冗長な記述になっているのです。
むしろ「寺町通御池上る」だけではあくまで「寺町通と御池通の交差点から北に向かえばどこかにあるよ」までしか分からないわけで、肝心の場所がピンポイントでどこかを記述しているのは488番地の部分なのです。
そんなことなら、もしかして通り名表記の部分はなくても問題ないんじゃない? という気分になってきませんでしょうか。
現に、通り名表記を使っていないお店も多くあります。

