夫婦別姓が進まない本当の理由
突然ですが、あなたは選択的夫婦別姓制度に賛成ですか、反対ですか? 賛成・反対ともにさまざまな意見がありますが、世界的に見れば夫婦別姓が一般的であるにもかかわらず、日本で夫婦同姓が義務づけられているのは、日本の社会保障制度が家族単位だからです。
日本の社会保障制度が家族単位であることは、2020年4月の新型コロナウイルス感染症に対する特別定額給付金が家族単位で支給され、受給権者が世帯主であったために起こった騒ぎを思い起こせば、よくわかるでしょう。
給付対象者が住民基本台帳に記載されている人、すなわち個人であるのに、お金は世帯主に一括給付されたため、家庭内暴力などで避難している人たちに届かないといった問題が起こり、見直すべきだという声があがったのです。
日本では公的医療保険も、本人と生計を同じにする扶養家族が一緒に加入する、すなわち家族単位です。介護保険は、個人で加入して個人ごとに保険料を払っているにもかかわらず、同居家族がいると受けられないサービスがある、といった矛盾が指摘されています。
日本の社会保障が家族単位なのは儒教の影響とも考えられますが、日本よりも儒教が浸透している韓国では夫婦別姓ですし、かなり前に個人単位の社会保障制度に変わりました。いずれにせよ、社会保障制度が個人単位にならないと、夫婦別姓問題も根本的解決にはならないのです。
男性介護者が陥る“神話”の罠
介護についていえば、介護保険の導入と意識の変化によって“嫁介護”は減りましたが、
家族介護がいまだに半数を占めています。要介護者のうち、同居人が主な介護者である人は45.9%と約半数を占めていて、主な介護者の22.9%は配偶者、16.2%が実子、子の配偶者は5.4%となっています(2022年「国民生活基礎調査」)。
性別では女性が68.9%、男性が31.1%と、女性が男性の2倍以上です。嫁介護が減った代わりに、妻や娘による介護が増えたのです。
介護者が女性に偏っていることも問題ですが、男性が介護者の場合にも問題があります。介護保険制度について無知だったり、「介護は家族にされてこそ幸せ」という“家族介護の神話”に縛られていたりすることが多いため、何もかも自分で背負って社会的に孤立してしまうことがあるのです。
一方、一人暮らしの高齢者にも、社会保障制度が家族単位であるがゆえの問題があります。たとえば入院するとき。ケアマネジャーやケースワーカーといった介護職員や自治体の職員に、救急車に同乗する義務はないのですが、救急隊員に求められれば同乗せざるを得ません。入院が必要となったら、身元保証人欄にサインを求められることもあります。
介護職員も自治体の職員も“労働”として介護に携わっているのであり、職務の範囲外のことは断っていいはずですが、家族の役割まで担わされてしまうのが現状です。「公的介護は家族介護の補完である」という考えが根強いからですが、このようなシャドーワークをなくすためにも、社会保障制度の見直しが必要です。

