28年間追跡した大規模研究
この疑問に挑んだのが、ポーランド科学アカデミー哲学・社会学研究所の社会学者グジェゴシュ・ブルチャク博士です(*3)。
博士が用いたのは、米国政府が実施している全米規模の長期追跡調査です。調査は1994〜95年、思春期の中高生を対象に始まり、2022年まで実に28年間にわたって追跡が続けられました。
分析対象は約1万6000人。この間に亡くなった人の記録と、若い頃の容姿評価を照らし合わせることで、「見た目」と死亡リスクとの関係を検証しています。なお、ここでの死亡は死因を区別しない「全死亡」を対象としています。
この研究の特徴は、「自分で評価した容姿」を使っていない点です。
家庭訪問を行った訓練済みの調査員が、対象者の容姿を5段階で評価しており、「社会からどのように見られていたか」を反映した客観的な指標が用いられています。
自己評価には「自分を実際より魅力的だと思う人」や「必要以上に低く評価してしまう人」が含まれますが、この研究ではそうした心理的な偏りをできる限り排除しています。
では、その結果はどうだったのでしょうか。
容姿と死亡率の関係
分析結果は、多くの人の予想を上回るものでした。
思春期(平均15〜16歳)に「容姿が魅力的でない」と評価された人は、「魅力的」と評価された人に比べて、28年間(40代前半)で死亡するリスクがおよそ1.6倍に達していたのです。分析期間中に死亡してしまった方は全体で706名だったのですが、そこに容姿の影響があったわけです。
一方で、「平均的な容姿」と評価された人と「魅力的」と評価された人との間には、統計的に明確な差は確認されませんでした。
つまり「容姿が魅力的だから長生きする」のではありません。
むしろ、一定の水準より低く評価された人だけが、大きな健康上の不利益を受けている可能性が浮かび上がったのです。
これに加えて、論文ではさらにもう一歩踏み込んだ分析を行っています。

