「円安に関心がない首相」である証拠
昨年10月21日、高市政権が発足してから今年7月までの間、主要先進国の通貨は、米ドルに対して2%程度下落した。その間、円はドルに対して約6%下落した。イランと米国の戦闘再開で「有事のドル買い」があったといえ、円の下落幅は突出している。
ドル/円の為替レートの変化を見ると、欧州時間以降に円売りが増えることが目立つ。海外勢主導で円安が進んだともいえそうだ。
その主な背景として、海外投資家からすると、高市首相は円安加速、財政悪化のリスクにあまり関心がないように見えることが挙げられる。これまでの発言を振り返ってみよう。
2024年9月、自民党総裁選中の発言は象徴的だった。円安をめぐって「輸出産業はどんどん輸出できるチャンス。外国為替資金特別会計(外為特会)の余剰金も増える」と述べたのだ。また、「政府と日銀の政策連携協定(アコード)を今すぐ見直すことは全く考えていない」とも断言した。
昨年11月には、歴代政権が重視した基礎的な財政収支(プライマリー・バランス、政策経費をその時々の税収などでカバーしているか否かを示す指標)を、単年度で黒字化する目標を取り下げた。財源を明確にせず減税や補助金支給を増やし、国債の増発に拍車がかかるとの懸念は増えた。
「円安ホクホク」発言がダメ押し
今年1月末、衆院選での応援演説はことさらに印象的だった。
「今円安だから悪いって言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。食べ物を売るにも、自動車産業も、アメリカの関税があったけれども、円安がバッファーになった。ものすごくこれは助かりました。円安でもっと助かってるのが、外為特会っていうのがあるんですが、これの運用、今ホクホク状態です」
外為特会では、主に米国債で資金を運用する。円安により利息収入はかさ上げされる。その一部を一般会計に繰り入れることができる。令和6年度決算では、約3.2兆円を翌年度の一般会計に繰り入れた。これは2025年度の補正予算額(18.3兆)を下回る。
首相の円安や財政政策に関する発言は、円安は進んだほうが良いとも受け取れる。国債の増発は問題ないと解釈できる発言を繰り返した。円は売り。日本国債も売り。こうした見方は投資家、特に海外投資家の心理に浸透した。
