利上げ後手→インフレ→円安の悪循環
7月以降、海外の投資家の間では、「骨太の方針=HONEBUTOに注意せよ」との警戒感も高まった。骨太の方針原案の内容を根拠に、高市政権がわが国の経済に深刻な打撃を与えるとの不安は急上昇した。海外の大手投資家は、われわれが考えている以上に高市政策への懸念を抱いているようだ。
昨年10月の首相就任直後から、経済の専門家からは「高市政策のリスクは高い」との指摘はあった。主な指摘の一つは、日銀の独立性についてである。政府が日銀に圧力を掛けて、低金利を継続させるのではないかと危惧された。また、積極財政政策による財政規律の弛緩は、財政破綻リスクを高めるとも懸念された。
そうした指摘に抵抗するように、高市首相は日銀の利上げに批判的な見解を示した。インフレが進む中での財政支出に加え、利上げが後手に回ると、物価の安定はかなり難しくなるだろう。インフレによって通貨の価値は棄損され、円の減価圧力は高まらざるを得ない。円安進行で輸入物価は上昇し、国内のインフレ懸念も上昇する。
首相肝いりの「HONEBUTO」が閣議決定
年初以降、首相の日銀に対する見解が報じられるたび、こうした懸念は高まった。さらに、首相自ら修正したという骨太の方針の原案で、依然として日銀に政府との連携を求めることが明記された。また、財源を示さないまま、17分野、総額370兆円の官民投資を行う方針も明示した。
この原案を基に、7月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針2026)」が閣議決定された。政権や自民党周辺にも、首相に適切なアドバイスを行える、有効なブレーンはいないとの懸念も出ているようだ。
それが、「HONEBUTOに注意せよ」との論調につながった。高市政権の経済政策の懸念を反映し、原案公表から7月上旬までの間、円安が進むと同時に、長期金利(新発10年国債の流通利回り)は一時2.90%を突破した。6月末からの金利上昇幅は0.30ポイント程度だった。
通貨の下落と金利上昇の同時進行が想起させるのは、2022年秋の英国だ。当時、トラス政権は財源を明示せずに減税を実行した。英国の財政悪化懸念は急上昇した。英ポンドは急落し、英国債(ギルト)も急落(金利は急騰)した。これを「トラス・ショック」と呼ぶ。


