たった5分の行動で入眠時間を短縮

ベッドに入った瞬間、明日やるべきことが頭の中をぐるぐる回り出した経験はありませんか。

「明日の朝一番にあのメールを返さないと」「会議の資料、まだ目を通していない」「クライアントへの連絡を忘れていた」……こうした思考のループが寝つきを妨げているとき、解決策は意外なほどシンプルです。

それは、頭の中で考え続けるのをやめて、紙に書き出すこと。たった5分のこの行動が、入眠時間を短縮することが実験で示されています。

目を覚ました後、ベッドで伸びる幸せな女性
写真=iStock.com/oatawa
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2018年、ベイラー大学(アメリカ)のマイケル・スカリン博士らが『Journal of Experimental Psychology: General』誌に発表した研究があります。

研究チームは、18~30歳の健康な大学生57名を集め、睡眠研究室で一晩を過ごしてもらいました。脳波計などで睡眠を精密に記録するポリソムノグラフィーという手法で、入眠までの時間(睡眠潜時)を測定しています。被験者は2つのグループに無作為に分けられ、就寝5分前にそれぞれ異なる作業を行いました。

1つ目のグループは、明日から数日のうちにやるべきことを5分かけて書き出しました。これがいわゆる「ToDo リスト」です。

2つ目のグループは、ここ数日にすでに完了したことを5分かけて書き出しました(このリストを便宜的に「完了リスト」と呼びます)。

紙に書けば9分早く眠りに落ちる

ToDo リストを書いたグループは、完了リストを書いたグループよりも平均で約10分早く(9分の差)眠りに落ちました。さらに、より具体的・詳細に内容を書いた人ほど、入眠が早くなる傾向も確認されました。

なぜ、明日やることをリストに書くだけで、眠りやすくなるのでしょうか。

鍵を握るのは「ツァイガルニク効果」と呼ばれる心理現象です。人間の脳は、未完了の課題のほうが完了した課題よりも記憶に残りやすく、注意を引き続ける性質を持っています。やり残しがあると、脳はそれを忘れないように繰り返し意識に上らせるのです。

ところが、ToDo を紙に書き出すと、脳は「もう覚えておかなくていい」と判断します。記憶しておく責任が外部の紙に移されたことで、繰り返し思い起こす必要がなくなり、思考のループから解放されるのです。これは認知科学では「認知的オフロード」と呼ばれる現象で、脳のワーキングメモリー(作業記憶)の負担を減らす効果があります。

【図表1】国が提唱「よい睡眠のためにできる5原則」
出典=厚生労働省