戦争は失うものがあまりにも多すぎる
初めての突撃でローニンは迫撃砲を被弾した。スペイン語が堪能なローニンは、ピャトナシュカ旅団でスペイン語圏の兵士ばかりとつるんでいた。だが、ロシア軍の共通言語は当然ながらロシア語だ。
あくまで推測だが、迫撃砲弾が放たれ、着弾するまでに約30秒ある。飛来音が聞こえると、ロシア語で「危ない」「伏せろ」という指示が出ているはずだ。ロシア語がわからず、回避行動が遅れたのかもしれない。ただ、亡くなった原因についての情報は最後まで掴めなかった。
「家族にはロシアの渡航を隠して出国した」
初めてローニンと会ったとき、僕にこう明かしてくれていた。大阪市内で一人暮らしをしながらロシアへの出国を計画したという。家族に明かせば止められると思ったのだろう。2024年11月には、「父親にバレたけど、メールを返信していない」とも言っていた。
ピャトナシュカ旅団に所属していたときも、ローニンはアウディーイウカの陥落まで一度も出撃しなかった。「自衛隊の元軍曹」という肩書きがありながら、実戦で頼られなかった現実に、ローニンはジレンマを抱えていた。
「早く僕も戦いたいです」
ローニンはピャトナシュカ旅団に所属していた頃から、常々僕にこう訴えた。そして、戦うために国防省の部隊に入隊したが、初めての戦闘で命を落とした。
戦争で何も期待してはいけない。期待するから失望する。だから、僕は何も期待しない。
戦争は、得られる成果より、失うものがあまりにも多すぎる。


