「人の物を盗まない」が通じない軍隊

とはいえ、価値観の相違も当然ある。

「人の物を盗んではいけません」

日本人にとっては当たり前のことだ。ところが、ロシア軍の一部の兵士には、この常識が通用しない。持ち主がわからない物ならば勝手に持っていく。それどころか、持ち主がわかる物でも欲しければ持っていく。つまるところ、まあ何でも盗むのだ。

戦地ではなかなか電源が取れないなか、ようやくフル充電できたモバイルバッテリーを盗む。それでスマホに充電するのではない。人のモバイルバッテリーにコネクターを差し込んで、自分のモバイルバッテリーを充電するのだ。

1年半以上軍隊にいる間、モバイルバッテリーを7回盗まれて2回取り戻した。取り戻したときの2回は、盗んだ兵士を本気で殴った。殴らないとわからないから本気で殴る。細かい物を合わせると、盗まれた回数は数えきれない。

基地では相部屋で一緒に暮らす仲間の兵士が、友人を連れてくることがある。その友人が部屋に置いてある別の兵士の私物を見て、「これ、前から欲しかったんだ」と発言したとする。すると、仲間の兵士は堂々と友人にこう告げるのだ。

「遠慮はいらない。持っていきなよ!」

他の兵士の私物なのに、勝手にあげてしまう。そんな瞬間を何度も目撃した。僕の私物を渡されそうになると、そのたびに「それは俺の物だ。あげるわけないやろ」と奪い返した。多くの兵士がそうやって客をもてなすからタチが悪い。

ロシア軍の軍隊のクローズアップ画像
写真=iStock.com/Mr-Tigga
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中国人義勇兵「ロシア兵は鬼だ」

片道8kmの山道を3往復して受け取った食料をすべて盗まれた。ドローン部隊にいたときはWi-Fiルーターと鍋も盗まれた。戦地での過酷な環境には適応したが、盗みだけは慣れないし、慣れたくもない。

ピャトナシュカ旅団に所属していた頃、外国人義勇兵にロシアの軍隊について聞いてみたことがある。まず、韓国人義勇兵はこう胸の内を明かしてくれた。

「人間のレベルが低い。司令官でさえ、戦闘に出ない卑怯な奴らだ」

彼は現在、除隊して別の国に移住している。

ベラルーシはロシアの同盟国である。そのベラルーシ人が入隊して驚いていた。

「ここまでロシア人が怠け者で働かない奴らだとは知らなかった。軍隊も、家族のような絆を感じるベラルーシとはまったく違う」

最後に聞いた、中国人義勇兵は一番辛辣な言葉を発した。

「一言でいえば鬼だ。コイツらに指示されて戦争するなら刑務所のほうが数倍快適だと思う」

そう語った彼は、実際に軍隊から脱走した。逮捕されて今は軍刑務所にいる。

ロシア軍の突撃作戦は他国と比較して、あらゆる点で過酷だ。作戦内容が事前に明かされることはほぼないため、戦地で個々の兵士が判断して対処するしかない。死亡する可能性が極めて高い命令を平然と告げるロシア軍司令官に対し、嫌悪感を抱いている外国人義勇兵は少なくなかった。